10人に1人の子どもが虐待を受けている

Lancetが英国小児科学会とのコラボで行う児童虐待シリーズとして
1年かけてまとめられた一連の論文を発表。

それらが指摘するところによると、
高所得国の児童10人に1人が何らかの虐待を受けている、
このところ英国民に衝撃を与えているBaby Pのケースのように
児童福祉にリスクが把握されているものは氷山の一角に過ぎない、と。

4-16%の子どもが身体的虐待を受けており、
5-15%の女児、1-5%の男児が狭義の性的虐待(性器挿入)
広義の性的虐待だと女児の15%、男児の5%に及ぶ。
精神的な虐待を受けているのは10%で
ネグレクトを受けていると思われるものは15%と推測される。

この問題の広範な広がりと複雑さが再認識された形で、
Baby P事件に関する報告書が指摘する児童保護行政の問題点について早急な対応が必要と。

One in 10 children suffer abuse, say experts
The Guardian, December 3, 2008

この記事を見て、そのうち元論文の所在を探してみようと思っていたところ
AFCPさんがブックマークしてくださっていました。
(AFCPさん、ありがとうございます)

Child Maltreatment
The Lancet, December 2, 2008


Lancetに論文を寄せた専門家が
この問題について科学的な検証を行っていく必要を説いていることを思えば、
なんの根拠もない素人の感想で申し訳ないのですが、

「科学とテクノロジーで何でも、命までも思い通りにできる」
「どんな子どもを持ちたいか、親が選ぶことができる」という文化の浸透が
子どもをまるで親の所有物のような存在に変えていきはしないか、

また、その一方で
大人たち自身がゆったりと人生と向かい合って生きていくことが出来にくい世の中へと
世界が急速に変貌していることも無関係ではないんじゃないか、

慎重な議論を待たずに積み重ねられる「やった者勝ち」の既成事実の勢いと
強者に都合のよい科学的な根拠だけが出てくる分かりやすいコスト効率議論とによって
弱肉強食化する世界の力関係が
親と子、大人と子どもの関係にも
そのまま反映されているのではないか、

児童虐待も含めて一つ一つの問題に対処する方法を考えることも必要だろうけれど、
もう一方で、それらの問題をもっと大きな図の中で捉えて、
効率と競争と力が席巻する世の中の動きそのものに対して、
一旦この辺りで踏みとどまって慎重に考えてみることが
実は真の問題解決のためには必要なんじゃないだろうか、と。