NHSの患者データから研究者が治験参加者を一本釣り?

ブラウン首相と保健相は
英国の医学研究の国際競争力強化を狙って
研究者らにNHSの患者データへのアクセスを認めて
研究者から患者に直接治験へのお誘いをかけられるようにしようと考えており、

NHS憲章草案と同時に発表されたガイドラインの中に
そうした項目が盛り込まれている。

NHS憲章草案は保健省のホームページで公開中で
コンサルテーション(日本でいうパブリック・コメント募集)の最中。
しかし、細かい字でびっしり書かれた文書の中では
この項目は、ほとんどこっそり忍び込まされているといった趣き。

それを「倫理的に認められない」と看破、指摘の声を上げたのは
子ども病院が子どもの組織標本を違法に保管していたスキャンダルを機に
去年新たに作られた、医療と福祉における情報管理の監視団体の長Harry Cayton氏。

「研究の公益が大きいのだから
情報提供への同意も守秘義務も問題にならないと言いたいのだろうが
そんなことは通らない。
 明確な法的根拠があるのかどうかも疑問」
として、Cayton氏は保健相宛に問題を指摘する書簡を送った。

保健省では指摘にはとりあえず感謝、近く回答を発表するとのこと。



この記事によると英国政府は2006年にも
NHSの患者データの全てを
Spineと呼ばれる全国オンライン・データベースで管理する計画を発表、
Guardianの批判を受けて
患者にオプト・アウト(拒否することは可能)の選択肢を設ける修正がされたとのこと。

当ブログでも同じ匂いのする動きとして
中学の成績が一生データベースにというニュースを紹介していますが、

エントリーに書いていないけれど記憶にあるニュースとしては
全国民のインターネット利用記録と携帯の通話記録を
テロ予防のため一定期間政府が保管するという話もありました。

こういうことを次々に考え付く国で
医学研究で勝ちを収めることが国益だからと
国民個々のプライバシー権がこう簡単に無視されるとなると
こうしたニュースに良く使われる表現ですが、
やはり“ビッグ・ブラザー的な”国家になりつつあるのかなぁ……と。

もっとも、ちゃんと監視団体が出来ていて、
早速それに正面から噛み付いてしまう辺りが
英国の面白さなのかもしれませんが。