米”お金がすべて”の自閉症行動療法事情

Washington州の親は自閉症の子どもの行動療法(ABA)に
毎週1000ドルを支払っていて、

Indiana州の親は年間3000ドルを払って
同様のセラピーを健康保険でカバーしてもらっている。

──というのが、自閉症児への行動療法を巡る米国の州による地域間格差

記事の中には、夫婦ともフルタイムの共働きでありながら
保険がカバーしてくれない子どものセラピー料金を捻出するために
住居費を浮かせるべく親の実家に同居を余儀なくされているという夫婦も。

この2年間にTexas, Pennsylvania, Arizona, Florida, South Carolina, Louisianaの6州が
自閉症の子どものセラピーを保険でカバーするよう求める法律を通した。
子どもによっては年額5万ドルの保険料。

Autism Speaks では、2009年までに少なくともさらに10州において
同様の法律の成立を目指す。



読んでいて「なんだかなぁ……」とひっかかったのは
なんで行動療法が保険でカバーされにくいかという事情のところで、

もともと自閉症には治療法はないと考えている医師がほとんどで
行動療法の効果とか、効果がある年齢層について科学的なエビデンスが乏しいとか、
中には怪しげな療法を売り歩くセラピストもいるから
保険会社としてはチェックを厳しくして
2年もやって効果がなければ無駄なお金だと考えざるを得ないとか……。

あー、でも薬物の投与だったら
こんなにウザいことを言わずに出すんじゃないのかなぁ……と
ハスに構えて読んでいたら

保険会社の広報者が
科学的なエビデンスは次々に出てくるから
特定の療法をオーダーする法律は業界としては歓迎しないと述べた後で、
そもそも行動療法は医療なのか教育なのか、と疑問を呈している。

米国小児科学会もABAについての臨床報告は出しているものの
“教育的介入”と表現しているとのことで

そういう状況に対して、
自閉症への対応を学校から医療へ移そうという運動が起きているところなのだとか。

一方、Microsoftなどの大企業や米軍の保険では行動療法の効果を認めて
毎月受けられるように相当額の給付を認めたり、
セラピストの定義の範囲を広げたりしている。

連邦政府は先ごろ、
精神障害者への給付をその他の患者と平等にするよう保険会社に求める法律を作ったが
自閉症は心理症状ではないのでこの法律は当てはまらないと保険会社。

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自分が不勉強で、きちんとした知識がないからなのかもしれないけど、
こういうニュースを読むといつも不思議なのが
障害のある子どもに最も制約の少ない環境で最もその子に適した教育を無料で受ける権利を
保障しているはずのIDEAって、
こういう話のどこに繋がっているんだろう……ということ。

例えば肢体不自由の子どもなら
学校で理学療法作業療法を受けられると聞いたような気がするのですが、
それなら自閉症児の行動療法は、それと同じ話にはならないのかな。
それとも地方のスクール・ディストリクト毎に費用の捻出が難しくて
実際には理想は理想であって現実には機能していないとか、
学校教育の枠内では時間数が少ないとか、
これもまた地域間格差があるという話なのかな。

教育と医療の連携を、まさか保険業界の存在がジャマしているとか?