56歳の母親が語る息子の介護(豪・介護者週間)

英国でも介護者週間にはメディアがこぞって介護者の日常の姿を取り上げますが、
オーストラリアの介護者週間にもThe Canberra Times が関連記事を出しています。

オーストラリア統計局のレポートA Profile of Carers in Australiaによると
介護者は、介護を担っていない人に比べて睡眠時間が少なく、
家事にも長い時間がかかっている。

また男性よりも女性が介護を担う確率が高く、
55歳から59歳の女性の25%はが
障害のある人または高齢者を家で介護している。

Loving can lose out when caring
The Canberra Times, October 19, 2008

この記事が紹介しているのは
重い知的障害があって言葉のない22才の息子Jacksonを介護している
Sally Richardsさん、56歳。

直接、間接のSallyさんの言葉を記事から抜いてみます。

・ 介護者になるということは生活がそれによって決まってしまうということです。

・ Sallyさん夫婦が夜きちんと眠れることは滅多にない。

・ 一晩に5回も起こされることだってあります。時には夜中の2時・3時に起き出して、息子の身体をきれいにしてシーツを取り替えることも。

・ 夫婦は交代で休みの日をとることにしていて、人から招待されても息子を見てくれる人がいなければ断ることもある。

・ 介護って、ものすごく辛くなる時があるんです。世間から孤立してしまうし、気持ちが大きく落ち込んでしまうことだって。とはいえ、なかなか柔軟にやりこなせている自分をラッキーだとも思いますね。泣いてしまう日もまだありますが、そういうのはだいたい尾を引かず、またやるべきことに向かいますから。

 (統計局のレポートでは主たる介護者の35%が友人との接触がなくなるといい、
  介護者の3分の1以上の人が配偶者や家族との関係が難しくなったり、
 愛する人と共に過ごす時間がなくなったと答えた、との話に続いて)

・ 夫婦の間のストレスは本当に大きいですよ。私たちがまだ夫婦でいること自体すごいなと思うもの。

・ 世間の人に分かってもらえないのは、介護は生活全体なんだということ。生活の全てが介護になるんです。

・ 今ではJacksonも支援者と自分のビジネスを始めて介護もちょっと一段落しましたが、最終的な問題があります。私がもう面倒を見られなくなった時に、この子はどうなるんだろうということ。

夫妻は来年6月に旅行を予定している。
その間Jacksonのケアをどうするかについては1年前から計画を練ってきた。
息子は大丈夫と安心して出発できるだけの段取りを
当日までにきっちりしておきたいと考えている。

「きっと楽しい旅行になると思います。
 夫婦の関係もリフレッシュできるでしょう」



そう──。
子どもに障害があるからこそ、
夫婦がゆっくり語り合ったり、
一緒にすごす時間をちゃんと持てることが
子どもに障害のない夫婦以上に大事なのでは、と思う。

子どもに障害があれば、
妻にも夫にも求められる「親」役割はそれだけ大きいのだから。

子どもに障害があるからといって、
誰もが平気で四六時中「親」でいられるのではなく、
「妻」であり「夫」であり「女」であり「男」であり、
また「一人の人」であることのできる時間があってこそ、
自分を見失うことなく「親」もしていられるのだから。