「障害児とその親」支援と「障害者と介護者」支援がシームレスでない、という指摘(英)

英国の地方紙で、
双極性障害の息子を持つ母親が
障害のある子どもと介護者への支援が、子どもが成人すると切れてしまうことについて
子ども・青年期から成人期への切れ目のない支援の必要を訴えている。

息子のJoe Paraskevaさんは現在21歳で、
病院の入り口に火をつけようとしたとして放火の罪で服役中。

メンタル・ヘルス法で指定されたその病院には
事件の2日前から自発的に入院していた。

母親のLinda Morganさん(56)は4月の判決以来息子には会っておらず
ちゃんと治療を受けられていないのではないかと案じている。

息子の介護者でありながら、
息子が成人しているというだけで母親には何の権利もないことになるのは
まるで地元の精神科医療には裏切られたような気がする、と語る。

2007年から利用してきた児童・青少年メンタル・ヘルス・サービスは
家族を対象としたもので、素晴らしかったという。

その後、本人を対象にしたメンタル・ヘルス・サービスを2010年6月まで受け、
その間は母親も介護者支援団体の支援を受けることが出来たが、

その後(おそらくはJoeが20歳になったのを境に?)は何もなくなった、という。
Joeには、もうケア・ワーカーもつかないし、母親への介護者支援もなくなった。

現在LindaさんはHackneyのケアラー・センターを利用しているが、
精神障害のある成人の介護者にはもっとNHSから支援が行われるべきだ、と語り、
Joeの釈放を求めるキャンペーンを始めることに。

そのキャンペーンを支援している
精神障害者チャリティSANEのトップ、Marjorie Wallaceさんによれば、
SANEには「孤立感」を感じる介護者から相談が相次いでおり、

精神疾患のある人を介護している何千人もの人が心配です。
地方自治体の緊縮財政でサービスがカットされている時だけに」

Joeのケースを担当する当該NHSトラストでは
すでに広範な支援を提供しており、
母親とも連絡をとっているので、
息子さんへの対応を巡る不満や懸念の解消に努めていく、と。



記事の書き方なのか、英国の制度についてのこちらの無知の故か、
問題になっている論点がイマイチはっきりしない。

精神障害者の介護者への支援の話として書かれているようなのだけれど、
Lindaさんが現在求めている介護者支援というのが具体的に何なのか、

息子が20歳になった途端に介護者である自分への支援も打ち切りになって
成人した途端に本人への直接サービスだけになったけど、
障害児の介護者への支援制度との継続性を保障し
精神障害のある成人を介護する人にも支援を、と
精神障害者の介護者支援の継続性の話なのか。

成人した息子の医療や処遇について
親であり介護者である自分には発言権がないことを
どうにかして考え直してほしいという
障害児の成人後の親または介護者の発言権保障の話なのか。

(その発言権の無さというのは、このケースの事件性を背景にした話なのか、
それとも一般のケースでも一定の程度まで当てはまる話なのか、も?)

精神障害者と介護者の問題である部分と、
その他の障害者とその介護者の問題である部分もあまりはっきりしないし、

一方、記事全体を読んで勝手に受ける印象では
介護者支援よりも当人の支援の継続性の問題では、というふうに思えるし。


個人的には、当人への支援でも介護者への支援でも
「児」を対象にする制度と「者」を対象とする制度の間が
シームレスに繋がられていない、との指摘と受け止めた。

たしか米国のIDEAも21歳までを教育保障年限としていたと思うし
その後の支援の継続性が保障されない問題は以下の記事でも触れられていた。



私も、ミュウが養護学校高等部を卒業する時の、
突然QOLの低い生活に突き落される我が子を目の前に
不安で胸がふさがれ途方に暮れるような思いは忘れられない。

今はとりあえず、こんな感じ ↓
「夏にプールに入れる」というQOL(2011/8/12)

もちろん、夏にプールに入れればそれでいいという話ではなく
制度に望みたいところはいっぱいあるわけで、

日本の支援教育制度も
米国のIDEAを(都合の悪いところは端折りつつ)モデルにしているような気がするし、
支援の現場にいる人から常に聞く「制度の谷間」の一つにはこの問題があるのだろうし、
よく分からない内容ながら、いろいろ考えさせられる記事。