脳が解明されると人間はコンピューターになる(NBIC)

米国科学財団と商務省が共催したNBIC4分野の技術統合を巡るワークショップについて
その長大なレポートの一部をつまみ読みしているところなのですが、
(これまで読んだ部分は「米政府NBICレポート」の書庫に)

主要テーマのひとつ「人間の認知とコミュニケーションの拡大」の項目に、
「脳を完全に理解すると何が起こるか」というタイトルの論文があります。

NBICの1つInfoの専門家は実は脳を理解するよりも、
いっそコンピューターそのものになってしまいたいのか……と思わせられる内容。

書いたのはWarren Robinettという
ヴァーチャル・リアリティ、グラフィック・ソフトウエアのデザイナーで
NASAの軍事研究にも参加している人物。


記憶のメカニズムは?
学習、認識のメカニズムは?
知識とは、言語とは、情緒とは、思考とは──?

Robinettによると、このような疑問には
いずれ脳の機能が完全に解明されるにつれて完全な答えが出される、
その時には以下のようなことが可能になるのだとか。

ヴァーチャルな存在
電話で遠くの人と話が出来るのと同じことが視覚的にも触覚的にも可能になる。
遠隔会議、危険な場所や物体の遠隔操作、顕微鏡を使った環境操作(人体の内部など)。

ベターな感覚
現在のめがねや補聴器のような侵襲度の低い手段でなく、
外科的に眼球に修正を施し、いや、いっそ眼球そのものを取り替えてしまおう。
脳が解明され、視神経と人口の眼球が繋がれれば
これまでの人間には見ることのできなかったものを見ることも可能になる。
(例えば放射線とか)

ベターな記憶
この項目が何より不気味なのは、
この人にとって人間の脳はコンピューターと変わらないんだなと感じられる部分で
例えば、

人間の記憶の保存メカニズムは? その機構は?
人間の記憶のデータ構造は? バイトはどこにあるのか? 
人間の記憶システムの総和はギガバイトで言うと(またはぺタバイトか)?

こうした問いに答えさえ得られれば、
人間の記憶の機構に応じた追加メモリーをデザインすることができる。

記憶のメカニズムと、ビットの保存場所、そのつながりががわかれば、
PCと同じように脳のマイクロ外科手術で追加メモリーのインストールが可能だ。

出荷時(誕生時)には20ぺタバイトでも、200ぺタバイトになれたら、その方がベターだろう?

さらに人工の眼球に高性能のビデオ装置を取り付けておけば、
一生の間に見たものが正確に記憶され、
そのデータを1時間テープに取り出して棚に時系列に並べておくことも可能だ。
ナノテクによって、非常に小さな単位のデータ保存も可能になり、
一生分の記憶をあせることない完全な形で残すことが出来る。

ベターな想像力
将来起こりうることを予測して対処法を考えることが
脳の機能を強化することによって、はるかに正確にできるようになる。


でも実はこの論文の真骨頂はここからで
Robinett自身「本当にクレージーなもの」と銘打っていますが、

自分自身を新たなハードウエアにインストール
脳が完全に解明されれば、人の知識、パーソナリティ、性格、習慣が完全に解明されるので
それらをデータ化すれば一人の人間のマインドをそっくり別のハードに移すことも可能だ。
自分のバックアップを取っておけば死ぬこともない。
とろくさいニューロンしかない肉体とはおさらばして、
ナノ・スピードで機能するハードに乗り換えよう。
宇宙適応のハードに乗り換えれば、もはや地球環境なんて必要ない。

インスタント学習
本や学校で学ぶ古臭いやり方も楽しいかもしれないけど、
知識なんて一瞬にしてファイルごと得ることができる。
数学の博士号なんてワン・クリックでOK。

ミツバチの巣マインド
さらなるハイ・バンドのコミュニケーションによって
知は常に更新されていく。しかも個人の知と集団の知の境目はなくなって
ミツバチの巣のように人間の知は統合されて1つの大きな知の総合体を形作るのだ。

光スピードの移動
人のマインドそのものがデータ化されれば人の移動もデータの移動に過ぎない。
火星なんて1時間で行ける距離になる。

お好みの方向に進化
人間のマインドがプログラムとデータとなるので、
ハードもソフトも開発は思いのままだ。
出来ないことだらけのマシーン(つまり肉体)なんて棄てて
苦痛や空腹、肉欲やプライドから解放された人間は
次なる進化をどういう方向に求めるだろうか?


つまり、脳が全面的に解明された暁には
人間はコンピューターと一体化する、というか、
コンピューターそのものになるという趣旨なのですね。

何度も繰り返すようですが、
このワークショップも報告書も、
米国政府筋の様々な機関から代表者が集まって行われたもので、
決して、そこらへんのトランスヒューマニストらが集まって
好きなようにヨタ話を繰り広げているという話ではありません。