自閉症親子、飛行機から降ろされる(米)

かんしゃくを起こして騒いだ自閉症児(2才半)と母親が
すでに滑走路に向かっていた国内便の飛行機から降ろされ、
American Eagle社の対応を巡って、賛否両論がおきています。

Autistic toddler removed from plane
The Chicago Tribune, June 25, 2008

母親のインタビュー・ビデオがこちらABCニュースに。

記事内容とお母さんのインタビューからすると、
たまたま席が最前列だったために
オモチャなど沈静グッズの入ったバッグを持っていかれてしまったこと、
シートベルトをきつく締めたり、何度も引っ張って確かめたり、締めなおしにきたり、
感覚処理の問題へのスチュワーデスの無理解や
パニックし始めてからも怒鳴りつけて黙らせようとする態度が
事態をさらに悪化させ、母親の焦りを招き、それがまた本人の不安を助長したことなど、

どこかで何かがちょっと違っていたら起こらなかったかもしれないのだけれど
一つ一つが悪い連環として作用しあってしまい、
最後には席からずり落ちた子どもが通路に寝転んで暴れるに至った模様。

パイロットが
「機内に対処不能な(uncontrollable)親子がいるのでターミナルに引き返す」と
アナウンスをしたというのも、もう少し配慮のある表現はなかったのかなぁ。

その事態が続いている間の母親の気持ちを想像すると本当に気の毒で、
なんだかトラウマになりそうだ。

インタビューで母親が
「もうちょっと理解がある対応をしてもらえれば、起こらなかったこと」
と言っているのが状況を言い当てているような気もする一方、

バッグを渡す時に沈静グッズだけは取り出しておくとか、
予め子どもの障害について説明しておくなど、
母親の方ももう少し丁寧な対処ができていたような気がしないでもない。


一番気になるのは、こういう問題が起こると、すぐに
発達障害のある子どもを飛行機に乗せることそのものが是か非かみたいな
白か黒かのバッシングコメントが寄せられてくること。

「こういう子は飛行機に乗るな、車で移動しろ」とか
「大人しく座っていられない子どもは降ろされて当然」という声が起こってくるのだけど、
ある事態が出来するには、その過程というものがあるのだということが
そういうやり取りからは、いつもすっぽり抜け落ちてしまう。

ある日ある時ある特定の状況下で、ある特定の親子と
その時たまたま関ってしまった、ある特定の人物との相互作用の中で起きたことであり、
しかも一時に最悪の事態に至ったのではなく、
1つが起こって、それへの対応が次の事態を招き、というふうに、
連関と段階を経て起こっていったことだということを
もっと丁寧に考えたほうがいいんじゃないでしょうか。

接遇が職務の一部に含まれる職種の人たちには
発達障害のある人たちの特性や対処の仕方について
もっと知識を持ってもらうことも必要だろうし、

アメリカのスチュワーデスさんって、大人でも怖い感じを受ける時がありません?)

親の方も予め子どもに障害があることを航空会社に伝えて、
起こりうる状況や対応における注意点など理解を求める努力が必要なのかもしれないし。


自閉症に関する問題をテーマにしているブログ
Autism Vox が、この問題を取り上げています。

The Very Unfriendly Skies
By Kristina Chew, PhD
June 25, 2008

ここはAshley事件の際にも素早く反応したブログの1つでしたが、
昨日当ブログで取り上げた障害児人形についても以下のエントリーがありました。
ただ、今のところ開きにくくなっているようです。



【追記】
6月14日にも中国でも有名女優の子どもが飛行機に搭乗を拒否され、
航空会社を告発するという事件が起こっていました。