宅配ドライバーさんと「ルポ貧困大国アメリカ」
先週のある日のこと。
「あ、どうも」と荷物を受け取ろうとすると、
すかさず「トイレット・ペーパーいらない?」
すかさず「トイレット・ペーパーいらない?」
このオジサンはきびきびして気持ちがいい人なのだけれど、
唯一の難点がこれ。
唯一の難点がこれ。
荷物を手渡しし終えるかどうかというタイミングで
「味噌、いらない?」
「美味しい水あるけど、買わない?」
「味噌、いらない?」
「美味しい水あるけど、買わない?」
「いらない」と言えば「あ、そう」と引き下がってくれるから大して気にはならないのだけれど、
その日はなんだか未練がましく値段や個数を並べて粘った。
その日はなんだか未練がましく値段や個数を並べて粘った。
「でも歩いて2分で行ける生協でセールの時買うと120円も安いよ」と言うと
「そりゃ、そうだよね」と、今度はすんなり折れて
その代わりみたいにオジサンがボヤくところによると、
「そりゃ、そうだよね」と、今度はすんなり折れて
その代わりみたいにオジサンがボヤくところによると、
つい先日までは売る努力さえしていれば、
売れようと売れまいとそれでカンベンしてもらえたのだけど、
今度から一定数を売らなければならないことになって
ノルマをさばけなければ罰金を食らう──。
売れようと売れまいとそれでカンベンしてもらえたのだけど、
今度から一定数を売らなければならないことになって
ノルマをさばけなければ罰金を食らう──。
わし、宅配便のドライバーなのに、なんで、こんな目に?
……とばかりに頭を転がしつつ車に戻るオジサンの後姿は苦渋に満ちていた。
……とばかりに頭を転がしつつ車に戻るオジサンの後姿は苦渋に満ちていた。
ドライバーさんの仕事は宅配なのに、
なんでモノまで売らなけりゃならないんだよ、
しかも罰金ったって、そんなの無茶だよね……と
つぶやきながら階段を戻りかけて
「あ、これなんだ。同じなんだよ」と。
なんでモノまで売らなけりゃならないんだよ、
しかも罰金ったって、そんなの無茶だよね……と
つぶやきながら階段を戻りかけて
「あ、これなんだ。同じなんだよ」と。
郵便局も病院も学校も介護の現場も、
「いかにライバルよりも安くあげられるか」、
「いかに目に見える結果だけを短期間に出せるか」を証明することに血道をあげ、
すぐに目には見えないけれども本当は何よりも大切な本来の仕事と
じっくり取り組む余裕をなくしていく日本だって同じことで、
「いかにライバルよりも安くあげられるか」、
「いかに目に見える結果だけを短期間に出せるか」を証明することに血道をあげ、
すぐに目には見えないけれども本当は何よりも大切な本来の仕事と
じっくり取り組む余裕をなくしていく日本だって同じことで、
この本に描かれていることは
簡単に言えば9ページの以下の数行に尽きると思う。
簡単に言えば9ページの以下の数行に尽きると思う。
……国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを越えて世界を二極化している格差構造と、それをむしろ糧として回り続けるマーケットの存在、私たちが今まで持っていた、国家単位の世界観を根底からひっくり返さなければ、いつのまにか一方的に呑み込まれていきかねない程の恐ろしい暴走型市場原理システムだ。
そこでは「弱者」が食いものにされ、人間らしく生きるための生存権を奪われた挙句、使い捨てにされていく。
そこでは「弱者」が食いものにされ、人間らしく生きるための生存権を奪われた挙句、使い捨てにされていく。
これ、
宅配のドライバーさんがノルマを課せられて水や紙を売らされて、
宅配はちゃんと配達していてもモノ売れなきゃ給料から罰金を徴収。
それがイヤなら辞めても結構、代わりならいくらでもおるわい……と
無言のうちに脅されるのと同じことで、
宅配のドライバーさんがノルマを課せられて水や紙を売らされて、
宅配はちゃんと配達していてもモノ売れなきゃ給料から罰金を徴収。
それがイヤなら辞めても結構、代わりならいくらでもおるわい……と
無言のうちに脅されるのと同じことで、
実はこれと同じ話が形を変えて誰の周りにも
いっぱい進行しているんじゃないだろうか。
いっぱい進行しているんじゃないだろうか。
ただ、この本に書かれていることで、
少なくとも日本ではまだ起こっていないと思う(これからもそう願いたい)アメリカの悲惨は、
それ以外に生きる道が見出せないほどの隘路に貧困層を追いつめておいて
詐欺同然の口車で軍にリクルートしては真っ先にイラクの前線に送り込む恐ろしいカラクリ。
少なくとも日本ではまだ起こっていないと思う(これからもそう願いたい)アメリカの悲惨は、
それ以外に生きる道が見出せないほどの隘路に貧困層を追いつめておいて
詐欺同然の口車で軍にリクルートしては真っ先にイラクの前線に送り込む恐ろしいカラクリ。
しかも戦争まで民営化されて
民間の会社が“社員”を雇って“派遣”するのだから
国には責任は全くないし
給料だって条件だって無法地帯みたいなもので、
どんなに非人間的な条件であろうと不満があれば辞めればいい、
それ以外に生きていけないからやるという代わりの人間はいくらでもいる、と。
まさに「使い捨て」。
民間の会社が“社員”を雇って“派遣”するのだから
国には責任は全くないし
給料だって条件だって無法地帯みたいなもので、
どんなに非人間的な条件であろうと不満があれば辞めればいい、
それ以外に生きていけないからやるという代わりの人間はいくらでもいる、と。
まさに「使い捨て」。
無保険だから医療が受けられない貧困層を
いかにも実験に協力すれば治療してもらえるような舌先三寸でたぶらかして
すずめの涙の報酬で人体実験の資材としてリクルート……なんて、
本当は既に起きているのかも?
いかにも実験に協力すれば治療してもらえるような舌先三寸でたぶらかして
すずめの涙の報酬で人体実験の資材としてリクルート……なんて、
本当は既に起きているのかも?
本当にいいのか。
歯止めはもうかけられないのか。
歯止めはもうかけられないのか。
と、いつも同じ、ごまめの歯軋り。