遺伝子診断で嚢胞性繊維症が半減

米国マサチューセッツ州での調査において、
遺伝子診断の導入以降、嚢胞性線維症患者の数が半減したとの結果が
the New England Journal of Medicineに。

こうした調査はマ州のものが初めてなので、
同様の減少傾向は全米で起こっているものとみられ、

また新たな病気の遺伝子が発見されるにつれて、
このような傾向は広がりを見せるとも。

一方、医学の進歩によって嚢胞性線維症の患者の平均寿命はここ数年で倍に伸び、
現在では37歳とのこと。

以下の記事は「遺伝子スクリーニングが難しい倫理問題を引き起こしている」と
その倫理面に疑問を呈しています。

Genetic screening raises tough ethical issues
The Star-Ledger, March 10, 2008

ここにも、当ブログで何度も発言を取り上げている
ペンシルバニア大学の倫理学者Arthur Caplanが登場。

「遺伝子検査は選択と情報に関わる問題であって、
その選択の結果とは無関係だというフリをする傾向があるけれども、
我々が遺伝子検査にお金を払うのは
嚢胞性線維症を減らすことに繋がる生殖上の決定を行う人があることを知っているからだ」

またCaplanは
「今後、ホモセクシュアルの遺伝子が検査できるとなったら?
背が低い遺伝子の検査が可能となったら?」
と、今後遺伝子検査が広がるに伴い、
こうした倫理上の問題はより複雑化すると懸念。

ちなみに英国では
着床前診断嚢胞性線維症をはじめ障害・病気の遺伝子を持つ胚を
そうした遺伝子を持たない胚よりも優先して選んではならないとする法案が現在審議されていますが、


【追記】
米国でナース・プラクティショナーを目指しておられる方のブログで、
遺伝学の授業で嚢胞性線維症の患者さんの話を聞かれたという記事がありましたので、
TBさせていただきました。

20代の患者さんが病気を日常の一部として受け入れ、
仕事をしながら元気に暮らしておられる姿と

遺伝子検査を全否定するのではなく、
「早くから治療できる可能性」と前向きに捉えておられる言葉に
胸を衝かれます。

授業の中にこういう機会を設けられる遺伝学の先生が素晴らしいと思う。

病気や障害がただの統計数字やスティグマに満ちた悲惨なイメージとして否定的に捉えられないように、
障害や病気と共に生きている人の実像や、治療や支援の可能性にも目を向けたうえで、
遺伝子検査の意味をもっと広く深く考える機会が
医療職はもちろんのこと、
親になろうとする前の世代の人たちも含めて
広く様々な立場の人にあるといいのですが。