死体の展覧会

人間の死体にいろんなポーズを取らせて展示する催しが人気で、
それを業務にしている会社までちゃんと存在する……なんて
ウソだと思いますよね。ふつう。

でも、これ、れっきとした事実のようで。


ニュースそのものは
Cincinnati Museum Centerで展示に使われた“標本”の中に、
中国で処刑されたと思われる死体が混じっていたことから
“標本”の調達経路が問題となって、
展示が中止されると同時に捜査が開始されたという話。

そういえば中国って死刑囚の死体から臓器を摘出して
医療ツアーで移植を受けに来る外国人に売っていたことを
去年だったか(一昨年だったかもしれない)正式に認めていましたよね。
これもそれに類する話なのかもしれませんが、

でも、それはそれとして、この展示の話には
死刑囚の死体が混じっていたという以前の問題があると思うのですが?

人間であれ動物であれ死体を展示公開することが
どうして許されるのか分からない。

この展示、2月1日に始まるや、
最初の1週間で美術館創設以来の入館者記録を作ったとのこと。

現実にそういう催しが簡単に出かけていける場所で行われていたら
私自身はどうするだろう……と考えてみると、
ちょっと気分は複雑で、
確かに興味を持ちそうな気はする。
俗に言う“怖いもの見たさ”なのか、
それともタブーがあるから余計に見てみたいのか、
悪趣味だと分かっていながら「ちょっと見てみたい」気持ちが
私の中にもあることは事実。
博物館でインディアンの生首とか
生き仏になった高僧のミイラがあると、
まじまじと見入ってしまうし。

でも、その一方で
どこの誰とも分からない死体を「展示」して見世物にしたり、
まして、そのために「死体にポーズをとらせ」たり、
また、そういう展示に乗じて物見遊山に興じるという行為には
博物館の生首や生き仏とは全然違う卑しいものを感じてしまうから
きっと不快感が先に立って行かないんじゃないかなぁ。

だって、やっぱり、これは死者への冒涜でしょう。

記事にはカトリック大司教が尊厳を侵す行為だと批判するコメントはありますが、
一般市民の中から疑問視する声はでなかったのでしょうか。

そういえば冒涜という言葉は尊厳と表裏。
人間の身体とか命の尊厳がだんだん省みられなくなっていることと
こういう展示が人気を呼ぶこととも表裏なのかもしれませんね。

人を殺すことも
理屈抜きに問答無用でやってはいけないことだったはずのものが
脳死だ・尊厳死だ・安楽死だ・無益な治療だ・ロングフル・ライフ(生まれない方がよかった命)だ
本人の最善の利益だ・選別的中絶だ・最大多数の最大幸福だと
理屈をひねればやってもいいことになりつつあるし……。



【追記】
自分が行っていないので気がつかなかったのですが、
日本で話題になった「人体の不思議展」も
行った人のブログ記事からすると実は同じ類のものだったらしいので、
トラックバックさせてもらいました。