障害者とテクノロジー会議にTHニスト? 1

California State University of Northridgeの障害センターの主催で
毎年3月に障害者とテクノロジー会議なるものが開催されているということを
つい最近知って、

なるほど障害者支援技術の最先端ってどんなんだろう……と、
ちょっと興味を持ったものだから、
Conference 2008 Technology & Persons with Disabilities Conferenceのサイトを覗いてみたのですが、

スペシャル・イベントの講演のところで
しばらく忘れていた懐かしい名前に遭遇しました。

Ray Kurzweil
様々な新興テクノロジーの発展がある一定のレベルに達する“特異点”で
人類と人類社会は飛躍的な変貌を遂げて
ポストヒューマンの素晴らしい時代に一気に突入すると説く、
あのトランスヒューマニスト

トランスヒューマニスト(またの名をトンデモヒューマニスト)と障害者とは
天敵なのだとばかり思っていたので、ものすごく意外な気がして、びっくり。

ちなみにKurzweil講演の演題は「ハンディキャップの終わり」。
これって、フランシス・フクヤマのもじりでしょうか?
そういえばフランシス・フクヤマもT ヒューマニストらの天敵でしたっけ。

講演について短い解説があり、
Mr. Kurzweil will discuss how emerging technologies will be the great leveler in eliminating the handicaps associated with sensory and physical disabilities. Share the future with one of the field’s most respected visionaries.

新興テクノロジーというのは
障害によって生じるハンディキャップを解消して
健常者との差を埋めるスグレモノだという話をする予定で、
この分野の最も尊敬される預言者つまりKurzweilと一緒に
そういう未来を夢見よう……との特別企画だというわけですが、

ここで障害がさりげなく限定されていることに注目。
感覚障害と身体障害に限定なのですね。


この会議には毎年日本からも大勢の参加があるようで、
ツアーを企画しているユーディットという会社の当該サイトから
これまでの参加者の体験記が読めます。

一部読んでみたものはユーザーではなくメーカーの立場の人の体験談だったので、
専門的過ぎてちんぷんかんぷんではあったものの、
なかなか日頃の自分の生活の中からは想像もつかない先端技術の可能性の匂いがして、
技術が進み、それによってハンディキャップを克服できる人が増えていくことは
やっぱり素晴らしいことだと、それは素直にそう考える。
こんなに多くの人が熱心に研究開発に従事していることにも、
素直に感謝する気持ちにもなる。
実際にそういう展示を目の前にしたら、
あまりの可能性の大きさ素晴らしさに感動して、
キャアキャア言ってしまいそうだ……とも思う。

だけど、
その素直に感動したり感謝したりする気持ちの中にも、
どこか保留にしておきたい部分が残ってしまうのは、
あのKurzweilがこんなところで何をしているのだ? という違和感。

研究者や技術者、メーカーや旅行会社の関係者はともかくとして、
世界中から会場に詰め掛ける障害当事者たちは果たして
KurzweilをはじめとするT ヒューマニストらの思想がどういうものか知ったうえで
「障害の終わりというバラ色の未来」の話を聞くのだろうか……というひっかかり。

なぜか彼らは主流メディアに登場する際には
自分がT ヒューマニストであるとは名乗らないみたいなのだけど、
(Ashley論争の際にもDvorskyもHughesも、トの字も言わずに涼しい顔でテレビに出ていた。)

やはりKurzweilもこの講演では
トランスヒューマニズムとかポストヒューマンなどという言葉は使わずに
「障害の終わりというバラ色の未来」の話だけをするのでしょうか……。