THニストの描く近未来

トランスヒューマニストたちが思い描く理想の未来像が、
どれほど他愛ないかという話を。

Internet ExplorerOutlookの開発者の一人で
Ashleyの父親ともマイクロソフトつながりのある
Ramez Naamというトランスヒューマニストの著書から。

実際に老化を遅らせる、つまり若さを引き延ばすことができれば、社会にも少なからぬ利得がもたらされる。現在の総死亡例のおよそ半分を占める、加齢に伴う疾患の発生を減少させることができるだろうし、世界全体では、医療費を何千億ドルも削減できるだろう。若年層の医療費は老年層のそれに比べて少なくてすむからだ。また、精神的にも身体的にも良好な状態が長く続き、若い世代の稼いだ分を使い尽くすようなこともなく、自分で自分の身を処するに足る分を稼ぐことが可能だろう。要するに、若さを引き延ばすことができれば、寿命延長で引き起こされる問題が解決できると考えられるのだ。

「超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会」(P.95)

で、そうやって増える一方の人口をどうやって養うんだ──???

と、ごく当たり前の疑問が読者には生じるわけですが、
これに続く部分でNammも、その疑問を予測して一応答えています。

しかし、書かれているのは、
「たぶん、最終的にはそんなに人口は増えないから
大丈夫じゃないかなぁ……」という程度の内容。

そういえばRay Kurzweilはこの点に関して、
クローニング技術を使って食肉を無限に供給する未来を語っていましたが、

……食べたいです? そういう肉?


Nammはこうも言っています。

もしもアルツハイマー病、うつ病、そのほか深刻な精神障害の発症を減らせば、年間何百億ドルもの費用が浮くことになる。それに加えて健常者の学習スピードや集中力を向上できれば、さらに何千億ドルもの生産力が得られることになるだろう。

記憶力がよくて頭の回転が速い人は高収入を得ることができ、社会全体の生産性向上にも寄与すると考えられる。人間の学習思考能力や、対人関係能力を増進させるようなテクニックとは、私たちの問題解決能力や科学的な大発見をする力を高め、よい成果が得られるようにしてくれるものだ。早く知識を身につけられる科学者は、専門分野の最先端に立てる。医師や看護師が長時間疲れることなく働ければ、患者を扱う上でエラーを犯すこともほとんどなくなる。頭のよいエンジニアはよりよい製品を生み出して、生活を豊かにしてくれる。頭のよいプログラマーは、よりよいソフトウエアをつくる。頭のよい建築家はよい建物を設計する。頭のよい生物学者は新しい薬剤を開発する。こうして社会全体が豊かになっていくのではないだろうか。

(同 P.67,68)


いつだったか、どういう番組のどういう場面のことだったかすら覚えていないのですが、
テレビで爆笑問題の大田が何かの弾みにつぶやいたのが妙に印象に残って、
忘れられない一言。

「頭のいいヤツって、どうしてこんなにバカに見えるんだろう……。」