どんどん進化し「ビジネス・チャンス」を広げていく出生前・着床前遺伝子診断技術

5月にフィラデルフィアで誕生した Connor Levy君については
以下のエントリーで紹介しましたが、



その続報のような形で書かれたWPの記事があり、
こうした次世代シーケンシング(NGS)による着床前診断技術の
ポテンシャルについて語られている。

この技術の先駆者である
オックスフォード大の Dagan Wells医師は、

30代前半の女性では胚の4分の1、
40代前半の女性では4分の3が異常なのに、
それらは顕微鏡では正常に見えてしまうので、
「着床させるのはどの胚にするべきか見極めるための、もっと良い方法が必要なのです」

「40代前半の夫婦が選ぼうと思ったら健康な胚が一つもない、
ということになる可能性もあるので、
生殖力が年齢とともに落ちる問題を
NGS技術が解決するわけではない」が、
若い女性ではIVFの着床率を上げるだろう、と。

スタンフォード大の法・生命科学センターのHank Greely氏は

「あまり遠くない将来の、ある時点で、
子どもを持とうとする人たちは自分の胚のゲノムを見て
病気になるとか、外見がどうかとか、どういう行動をとるか、男か女かといった
特性に基づいて胚を選ぶ技術的な能力を手に入れることになるでしょう」

世界中でこうした選別を禁じたとしても意味はない。なぜなら
「世界にはざっと200の国があります。
仮に199の国で禁じたとしても、
それは200番目の国にとって多大なビジネス・チャンスとなるだけですから」



WPには同じ日にもう一本、
こちらは新型出生前遺伝子診断技術に関する記事もあり、

こちらでは専門家の次のような発言が引用されている。

「手に入る情報はできる限り手に入れればいいじゃないですか」
前もって問題が分かっていれば、中絶を選ぶとか、
障害児をケアするための準備をあらかじめしておくことも含め、
親が選択肢を比較検討するのをhelpできるし、
子宮内胎児手術で子どもの生存率や予後を改善することもできる。

一方、この記事で紹介されているのはDenise Bratinaさんの事例。

Bratinaさんは4年前の37歳の時に、
羊水検査で胎児の染色体15にDNAの欠損があると言われた。
その欠損から起こる問題の可能性として、てんかん発作、心臓の奇形、発達の遅れのほか
多数の病気や障害を挙げられた。

通常なら、そんな小さな欠損までわかることはない。
が、Bratinaさんは染色体マイクロアレイ分析の研究の被験者だったので、
羊水検査で採取したサンプルのDNA検査で分かったのだった。

しかし同時に、その小さなDNAの欠損では
何も問題のない子どもが生まれる可能性もある、とも言われた。

5ヵ月後、健康な女児が生まれた。

研究チームがフォローアップの検診を提供してくれ、今のところ正常に発達しているし、
「将来、問題が起こってきたとしても、なぜかというのは分かるから」
検査でDNAの欠損が分かったことは喜んでいるというが、

中には健康な子どもが生まれた後にも、
心配がとまらない親もいる。

あまりに多くの情報は
病気や障害の直接の原因とは限らない遺伝子異常まで指摘してしまい、
親を混乱させるのではないか、と懸念する専門家も。

「検査を受ける人は、白黒はっきりつくと思っているし、
結果が不透明なことだってあると説明されても、その意味がちゃんと分かっていない」ために、

結果が不透明だった時に、
いつか病気になるんじゃないかと頭にこびりついて
子どもの健康や発達段階に過敏になる人もいる。



ちなみに、この記事に出てくる microarray検査を検索した時に引っかかってきたのが、
以下のレポート。

市場調査レポート 出生前診断の世界市場
Global Industry Analysts, Inc.  2012年7月1日 税抜きで439,971円

当たり前ですが、このレポートでは各種検査は「製品」です。

199の国で禁じたとしても、
それが200番目の国のビジネス・チャンスになるだけ――。