Savulescuによる「道徳エンハンスメント」論

Savulescuによる「道徳ピルのすすめ」プレゼンのビデオが
BioEdgeのエントリーにあったので、
ざっと聞いてみた。

聞き取りには自信がないので
かいつまんで概要のみ。

最初にSavlescuが自問自答してみせるのが
地球温暖化を起こすのは? 二酸化炭素
「9・11のテロを起こしたのは? 宗教原理主義
「フクシマの原発事故を起こしたのは? 地震津波

でも、これらは現象に過ぎない。
本当の原因は我々人間。

そんなところに原発を作ったのは、人間の選択だから。

人間はもともと
身近な人同士の内部では思いやり合うことができるように作られているが、
その外の存在に対しては、冷たかったりもする。
現在のようにグローバルな世界になると、
はるか遠くの人々(例えば途上国の人々)への想像は及ばないし、

その反面、我々の中には暴力的な者もいる。

人類の1%はサイコパス
世界で起こっている犯罪の50%は彼らが起こしている。

これだけ科学とテクノロジーが発達すれば
人間の暴力的な面が現象面で引き起こすことの酷さもまた
これまでの世界の比ではない。

ここから矢継ぎ早にいろんな事例を出して語るのだけれど、
聞き取り能力に限界があるので省略。

要するに彼が言いたいのは
OxytocinとかRitalinなどのSSRIを道徳ピルとして使って、
人々の衝動性、暴力性を抑制し、共感と協力的な姿勢を涵養しよう、と。

教育だって道徳エンハンスメントの一つだし、
コーヒーやスマート・ピルなど日常的なエンハンスメントは既にお馴染みだし、
スポーツではエンハンスメントは既に当たり前なほど広がっている、
これだけ人間の能力・パフォーマンスが科学と技術で向上させられる時代なのだから、

我々人間が作り出してきた温暖化や犯罪の増加といった問題に対処しつつ
次の世紀を人類が生き延びるためには、世界を変えるだけではなく
我々自身を、遺伝子工学をはじめとする科学と技術で変えていかなければならない。



何よりも気になるのは、
サイコパス(この言葉で彼は精神障害者を一括りにしているんじゃないかという気も)や
ADHDなどの発達障害者が短絡的に「犯罪者予備軍」と目されていること。
そこに見られる「個人モデル」思考。

それから涵養すべき望ましい特質を語る際に
「自己犠牲」とか「愛他(利他)主義」とか
SavulescuもWilkinsonもSingerも臓器提供や慈善への誘導の文脈で
とてもよく持ち出してくる文言が、ここでも出てきていること。



なお、
教育だってコーヒーだってエンハンスメントだというのは
私がサヴレスキュを初めて知った2007年から
彼のステロイド解禁論の決まり文句だった。