OR州のメディケイドとPASの関係について、癌専門医の投書

PASが合法化されているオレゴン州
癌患者にメディケイドから「抗がん剤治療はダメだけどPASはOK」という
通知が届く事態となっているという情報は以下のエントリーで拾っています。



ただ、2008年の問題については
11年の論文を含め、その後も特定の人のケースしか言及されていないので、
一般的な状況がどうなのか、ちょっと気にかかっていたところ、

医師による自殺幇助(PAS)合法化法案と違法化法案とが
相次いで州議会に提出されては否決される事態となっている
モンタナ州の州民に対して、

既に合法化されているオレゴン州の癌専門医Kenneth Stevensから、
合法化せず医療を守れ、と呼びかける新聞投書があり、
関連情報が含まれているので、以下にその個所を。

In Oregon, the combination of assisted suicide legalization and prioritized medical care based on prognosis has created a danger for my patients on the Oregon Health Plan (Medicaid). First, there is a financial incentive for patients to commit suicide: the plan will cover the cost. Second, the plan will not necessarily cover the cost of treatment due to statistical criteria. For example, patients with cancer are denied treatment if they are determined to have “less than 24 months median survival with treatment” and fit other criteria. Some of these patients, if treated, would however have many years to live, as much as five, 10 or 20 years depending on the type of cancer. This is because there are always some people who beat the odds. The plan will cover the cost of their suicides.
In Oregon, the mere presence of legal assisted-suicide steers patients to suicide even when there is no coverage issue. One of my patients was adamant she would use the law. I convinced her to be treated instead. Twelve years later she is thrilled to be alive.
Don’t make Oregon’s mistake.

オレゴンでは、
合法化された自殺幇助と予後によって優先順位を付けた医療制度が併存していることによって、
私のメディケイド患者には危険な事態となっています。

まず、OR州のメディケイド、オレゴン・ヘルス・プランは自殺幇助の費用を支給するので、
患者にとっては自殺に向かう財政的なインセンティブがあります。

次に、オレゴン・ヘルス・プランは統計データを基準に必ずしも治療のコストを給付しません。
例えば私の癌患者は、治療しても延命の中間値が24カ月を超えないとみなされたり、
その他の基準が当てはめられたりすると、治療を拒否されます。

そういう患者の中には、治療すれば何年も、
癌の種類によっては5年、10年あるいは20年だって生きられる患者もいます。
確率を超える人というのは常にいるわけです。それでも、
オレゴン・ヘルス・プランはそういう患者の自殺のコストを給付するのです。

オレゴンでは、PASを合法とする法律があるというだけで、
メディケイドの給付問題がない時でも患者は自殺へと促されます。
私の患者の一人は尊厳死法を利用すると頑固に言い張っていましたが、
私は治療を受けるよう説得しました。12年経って、いま
彼女は生きていることを喜んでいます。

オレゴンの過ちを繰り返さないでください。


この人の投稿には、
癌で亡くなった妻が最後の受診の際に、
帰りがけに医師から薬のオーバードースという方法がありますよ、と言われて
ショックを受けて「ケン、この人、私に自殺しろって言ってる」と言ったという
エピソードが紹介されており、それがPAS問題に触れた最初だった、と。