2013年1月10日の補遺

【久々にAshley療法関連】:アシュリー療法関連の文献はちょっと食傷気味なので、もう敢えて探そうという気にもならないのだけれど、たまたま目にしたので記録。

男女児2人それぞれの親から成長抑制の要望を受けた病院の医師らによる、「倫理的に疑問のある親からの要望に対処するには」と題した論文。11年。アブストラクトからすると、本人に意思決定能力があった場合に、それを望むかどうかを検討し、望むと思われた場合にはその先に裁判所の判断を仰ぐことを提言している模様。2つのケースでこの病院がどういう結論を出したのかは、アブストラクトからは不明。
Managing ethically questionable parental requests: Growth suppression and manipulation of puberty, David Isaacs, et al., Journal of Paediatrics and Child Health,Sept 27, 2011
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1440-1754.2011.02156.x/abstract;jsessionid=F67C6A5BC52FB42A6C580A989C627155.d03t01?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

こちらは去年の心理学者Jenna Nicole Mercadenteによる論文 ”Growth Attenuation, Sterilization, and Cochlear Implants: Ethical, Legal and Social Themes”.「歴史を通じ、障害のある人々は侵襲的な医療の対象とされ、身体的権利と統合性を侵されてきた」成長抑制と強制不妊と人工内耳に共通する倫理、法律、社会の問題……といえば、ウ―レットの“Bioethics and Disability”の第4章そのもの。
http://etd.ohiolink.edu/view.cgi?acc_num=wsupsych1309537482

また、09年にミネソタ・ロー・スクールの博士号候補者が書いた「アシュリー療法」に関する論文。現在の法律の枠組みは、生殖権と身体不可侵の権利を重視しすぎていて、その結果、個々人の尊厳や苦しまない権利、子どもについての親の決定権などが十分に尊重されないという問題がある。これではアシュリー療法の適用となる重症児の最善の権利は守れない……という論旨の模様。:思い出すのは、これ。(これも確か博士号候補者だったんじゃなかったっけ?) ⇒ 憲法が保障する“基本的権利”をパーソン論で否定する“Ashley療法”論文(前半)(2009/10/8)
http://heinonline.org/HOL/LandingPage?collection=journals&handle=hein.journals/mipr10&div=26&id=&page=


【それ以外】

アイルランドのALS患者、 Marie FlemingさんのPAS禁止違憲裁判で、Flemingさん敗訴。The three judge High Court ruled today the absolute ban is justified to protect vulnerable others from involuntary death and does not breach Marie Fleming's personal autonomy and equality rights under the Constitution and European Convention on Human Rights.:これは、まぁ予想通り。
http://www.irishtimes.com/newspaper/breaking/2013/0110/breaking1.html

ヘリウムが世界的に不足し始めている中、新手の自殺幇助の方法となりそうな「断食による自殺」の勧め。VSED:voluntary stopping eating and drinking という文言まで出来ているんだそうな。それにしても、ホスピス職員が基本的には健康な高齢者のその決断を受け入れ、サポートした、とは。そういえばFENが08年の事件で閉じるまで、HPで施設入所者などにこの方法を勧めていたっけな。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/01/sons-perspective-on-using-vsed-to.html

合法化されているORとWA州で、医師に処方された致死薬を飲んでも20%は死に切れなかった、というデータ。これは前から年ごとの報告にちらほら出てきている事実。:だからVSEDを、という話にそのうち向かうのか、まさか?
http://www.lifenews.com/2013/01/08/20-percent-who-take-drugs-in-assisted-suicides-dont-die/

BBCが自殺幇助で商売を始めた若者3人組を主人公にコメディの放送を始めたことがちょっと前に話題になっていたけれど、それについて議員さんからBBC批判。BBCについては前にも議会から「公費で合法化ロビーやるな」という批判が出た。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2257994/MP-blasts-BBC-new-comedy-series-Way-To-Go-makes-assisted-suicide-matter-fun.html


スリランカ人メイドの体内からクギ24本、サウジ雇用主の体罰か(2010年8月27日)
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2751170/6110038

こういうニュース、サウジの法律の問題もあるにせよ、本質的にはグローバルひとでなし強欲ネオリベ金融資本主義が広げている奴隷労働や、貧困層のバイオ資源化の問題と繋がっているんだと思う。介護や育児労働が奴隷労働化している実態は、2006年に既にこういう状態だった ↓
“現代の奴隷制”輸出入される介護労働(2009/11/12)


ドイツの移植医が待機リストを飛ばしたかなんかで、移植センターにスキャンダル:これから読む。たぶん。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jan/09/mass-donor-organ-fraud-germany

州当局や保健局など、行政が小まめにお知らせすることで、子どものワクチン接種率は上がります、という米国の研究。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/254690.php

英国政府は個々人が負担する介護費用上限額(それを超えたら国が負担する)に、先のDilnot提言(下にリンク)よりも2倍も高い所得制限を設けようとしており、その批判をかわすべく、年金を使って介護保険を購入する人に支援策を提案するとか?
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/jan/09/pensions-insure-long-term-care



ProPublicaって本当にすごいといつも思うのだけれど、今度は連邦政府に情報開示請求をして、米国のナーシングホーム監査の完全記録を公開。
http://www.propublica.org/article/feds-release-nursing-home-inspections

ゲイツ財団の4500万ドルかけた研究の結果によると、学校の先生の最も信頼性のある評価方法は、①生徒のテスト・スコア、②複数のレビュアによる教室観察、③生徒による先生評価だそうな。
http://www.washingtonpost.com/national/gates-study-weve-figured-out-what-makes-a-good-teacher/2013/01/08/05ca7d60-59b0-11e2-9fa9-5fbdc9530eb9_story.html


自殺念慮のある子どもたちへのメンタル・ヘルス治療は実は効果が出ていない……って、ずいぶん前からあちこちで言われ続けていると思うのだけれど、大きな調査でデータが出たらしい。JAMA Psychiatryの論文。
http://www.nytimes.com/2013/01/09/health/gaps-seen-in-therapy-for-suicidal-teenagers.html

フランスからは痩せ薬による死者続発スキャンダルの続報。ヤセ薬についてはエントリーいくつかあるけれど、これ以後はたぶん補遺か。
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jan/06/france-scandal-weight-loss-drug


曽野綾子「東電に責任はない」「放射能の強い所は、じいさんばあさんを行かせればいい」:11年の記事なんだけれど、教育再生会議曽野綾子が入ったという話から芋づるで出てきたて、ものすごく怖かった。
http://d.hatena.ne.jp/dj19/20110518/p1