トリソミー13・18、医師が描くより子も親もハッピーで豊かな生活

Pediatrics誌に掲載された論文の調査報告で、

トリソミー13と18の子どもは
たいてい生後1年以内に亡くなるし、
それ以上に生きた子でも重症障害を負い、短命であるとされており、
出生前に診断されると中絶する親が多いが、

いくつかのオンラインの親の会のメンバーを募って
272人のトリソミー13または18の子どもの親(すでに子どもを亡くした人も含む)
332人に調査を行ったところ、

医師らが一般に描いてみせる子どもと親の生活像とは違い、
子どもとの生活は総じて幸福で、報いの多い生活だった、と答えた、という。

親が医療職から言われていたのは、
87%の親では、その子は生活と両立不能(その子がいたのでは生活が成り立たない)、
50%の親では、その子は「植物」になる、
57%の親では、その子はずっと生きている間苦しむ、
23%の親では、こういう障害のある子どもは「夫婦や家族の生活をめちゃくちゃにする」。

一方、回答した親の97%が
子どもが生きた期間の長さにかかわらず、
子どもはハッピー・ベイビーだった、家族や夫婦の生活を豊かにしてくれた、と答えた。

主著者で新生児科医、
モントリオール大の小児臨床倫理マスター・プログラムのAnnie Janvier医師は、

「我々の研究が示しているのは、
医師と親とではQOLとは何かという点で考え方が違う可能性」

また
「あらゆる障害についての医学文献(the なので論文中で触れたもののことか)でも、
障害のある患者またはその家族は、障害者のQOLを医療職よりも高く評価していた」とも

この論文の2人目の著者は
トリソミー13の娘を亡くした母親でMSc(?)のBarabara Farlowさん.

この人、名前を見た瞬間に「あ、あのBarbaraさん……?」と思った。

カナダのトロント子ども病院で娘のAnnieちゃんが親の同意なくDNRにされたとして
訴訟を起こして、ブログでキャンペーンを張っていた、
あのFarlow事件の母親、Barbaraさん。たぶん。 ↓


この研究でのFarlowさんの結論は、

「私たちの研究が明らかにしたのは、親の中には
どんなに短い期間しか生きられなくても障害のある子ども受け入れ、愛することを選び、
幸福で豊かな人生を経験した人もいる、ということ。

私の希望は、
こうした親を理解し、親とコミュニケートし、親と共に意思決定を行う医師の能力を
この知見が高めてくれること」



そうかぁ。

Barbaraさん、その後も頑張ってたんだなぁ……。

私は事件が公になった頃に、ある人からの情報で
Annieちゃんに行われた子ども病院の不正を訴えるために彼女が書いた長文の手紙を読ませてもらい、
そこに添付された死後のAnnieちゃんの写真を見たことがある。

全身に異様な赤い斑点があり、
それがフェンタニ―ルを過剰に投与された証拠だ、
勝手にDNRにしただけでなく薬で死なされたのだ、と
手紙は必死に訴えていた。

その後Farlowさんご夫婦は訴訟を起こしたけれど、
結局は資金の問題から途中で諦めざるを得なかったし、

それら一連の出来事の間はもちろん、
その後も長い間、さぞ悔しく、はらわたの煮える思いをしたことだろう。

でも、そのBarbaraさんが、
今、こうしてAnnieちゃんのような子どもをこれ以上出さないために
学者と一緒になって、こういう仕事をしてくれているのだと思うと、

Barbaraさん、ほんと、嬉しいよ。
spitzibaraも勇気がわいてくるよ。

ありがとう。

     ――――

ついでに、この論文には3人目の著者がいる。
この人も私には因縁の人物。

Benjamin S. Wilfond.

シアトルこども病院、トルーマンカッツ生命倫理センターのディレクター
……でした。少なくとも数年前までは。

Ashley事件の担当医、あのDiekemaの同僚。

Ashley事件の途中から、
一般化に向けてシンポやWGを一応、表向きは引っ張っている人ですが、

彼自身は、もともとは
Fostのラディカルな無益な治療論にやんわりと反論するような穏健な倫理学者です。

そのWilfondが、ここに名前を連ねているのも、
私には、ちょっと嬉しい発見でした。