英国医師会が“臓器不足”解消に向け「臓器のためだけの延命を」

英国医師会(BMA)が
“慢性的な臓器不足”により年間1000人が死んでいる事態の解消のため、
臓器摘出に関して、思い切った提言を出した。

ざっと、以下のことを認めるよう提言している。

① 臓器ドナーにする目的でのみの延命。
② 生後3か月以内の新生児にも脳幹テストを行い、死亡宣告して心臓を摘出。
③ 高齢や有病などハイ・リスクのドナーからの摘出。
④ 死んで間もない患者から心臓を摘出し、
血液と酸素を送って機能を維持しつつ、
移植して拍動を再開させる方法。
⑤ ERのスタッフに提供可能性のある患者を特定し、
家族に働き替えるよう要請。
⑥ 臓器を提供するよう求められた家族の拒否率35%の改善に向けたキャンペーン。
⑦ 必要になったら臓器はほしいけど自分は提供しないという人の
「道徳的不均衡」についてのキャンペーン。
⑧ 運転免許の申請や更新手続きの際に提供への意思表示が去年義務付けられたが
それをパスポートや確定申告、GP登録、選挙登録などにも拡大。


臓器目的での延命は、提言では「選択的人工呼吸(elective ventilation)」と呼ばれており、
単に臓器の鮮度を保つ目的で生かしておこう、というもの。

脳卒中などで脳幹検査で死亡宣告された患者の場合、
通常なら無益な治療として生命維持が停止されるが
その人に臓器提供の意思があるかどうかがわからない場合には
それがわかるまで生かしておく。

現在はこうした患者からは
肝臓、腎臓、肺しか提供されていないが、

1988年にこうした方法で心臓移植をやった病院があり、
その際には50%も移植に使える臓器が増えた実績があるが、
その後、1994年に保健省が違法行為と定めた。

それにより永続的植物状態が生じる恐れがあるとか、
他者の利益のための治療を患者に施すのは非倫理的だ、などの批判があるが、

BMAの倫理部門のトップ、Nathanson医師は、
ドナー登録している患者なら問題はないのでは、と。

このテクニックはスペインと米国ではすでに行われているし、
患者本人には無益な治療を他者への利益のために行う倫理問題についても
少しずつ意識は変わってきている、という医師も。

BMAの報告書は
「心肺機能停止に続いて死亡宣告された患者の心臓が
その後、拍動を再開して他人に移植されるというのは難しい概念なので
慎重な説明が必要となる」と書きつつも、

米国で成功しているこのやり方は
「研究すべき領域として、妥当かつ重要で」あり、
「提供可能な心臓を増やし、ドナーになりたいと望むより多くの人の願いをかなえるという
2つの可能性がそこにはある」と書く。

Nathanson医師は
「ちゃんと説明すれば、
動脈瘤のある人に移植されたドナーの心臓が
電気ショックでよみがえって打ち始めるとか、
そういうテレビドラマのような話ではないことが
家族にも理解されるはずだ」と。

もっとも、集中治療の医師らからの批判にも報告書は触れており、

脳死ドナーからの移植数が減っている焦りから、このような
あらゆる携帯の臓器提供に対して医療職、国民双方の信頼を損なう可能性がある介入に
手が出された、との批判や、

このようなやり方は許される範囲の境界線のものだ、などの指摘がある。

この記事に引用されている限りではNHSの関係者は
臓器さえあれば治療可能な病気で死んでいく人が毎年500から1000人いるのだから、と
BMAの提言を歓迎している模様で、

保健省のスポークスマンのコメントは
「死よりも前に行われる一切は患者の最善の利益にかなったものでなければならない。
患者に深刻な害や苦しみを与えることは本人の最善の利益にはならない」。


でも、その「死」の定義が、
移植医療の都合によっていかようにも操作可能だということは
脳死」「DCDプロトコル」「循環死」などで明らかなわけで、
つまり保健省の言う「死よりも前」の線引きは、動かせるということでもあり……。

いろんな立場の人が、「厳格なセーフガードは必要だけど、
深刻な慢性的な臓器不足解消のためには、やろう、やろう」と
口をそろえて言っている。

「セーフガード」の中身についてなど、まるっきり興味ない口調で――。



おそろしい……。


その後、続報こちらに ↓
EVについても、もう少し丁寧に書いています。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64780241.html