23歳ラグビー選手のDignitas死で、GPの「守秘義務」が論争に

英国の23歳のラグビー選手が事故で首から下が麻痺した状態となって絶望し
両親に伴われてスイスのDignitasで自殺した08年9月のDaniel James事件は
自殺幇助合法化議論で「すべり坂」の典型例として言及されることの多い事件ですが、

そのDanielさんの主治医が、
Dignitasヘ行って自殺しようとしている彼の意図を認識しており、
その意図を表明した文書まで目撃していながら
出発してしまった当日まで警察に知らせなかったことが明らかとなり、
論議を呼んでいます。

チューリッヒへ向かう前にも何度か自殺未遂を繰り返しており、
死の6か月以上前に主治医であるGPは精神科医に紹介した、とのこと。
その時の精神科医の判断は、自己決定能力はある、というもの。

GPが署名入りの幇助自殺意図を明示した文書を見たのは8月28日。
Danielさんがスイスに向けて旅立ったのは9月9日のことでした。

Dignitasでの自殺は9月12日。

GPは守秘義務のために警察に通報しなかったと主張し、
警察は、守秘義務を盾に取られると自殺幇助事件の捜査が困難なので、
医療職の責任を明確にしてほしい、と求めている、とのこと。



26日午後8時前現在、
この記事には15件のコメントが寄せられており、
そのうち新しい順に6件と古い順に6件の合わせて12件を読んでみたところ、
1件が「こんなに若いのになんて悲しい」というだけのもので
その他11件すべてがGPの行動を支持するものでした。

それぞれへの評価も、いずれも支持のみ多数。

支持の根拠は、守秘義務と同時に、死は自己決定権だという意見と、
ちょっと気になるものとして「QOLが低くなって可哀そうに、
それでは死にたくなるのも無理はない」というものも。


守秘義務」という切り口で言えば、
非常に難しい問題なのだろうとは私も思うのですが、

それ以前に、
事故で障害を負った人が自分の障害を受容するためには時間と支援が必要であり、
彼と同じ経験をした人の中には一定の悲嘆の時間を過ごした後に
そこをくぐり抜けて現実を受け入れ、生きる希望を取り戻す人もあることを
主治医は知っているはずであり、

だからこそ、彼を精神科医に紹介したのでは、とも思えたりもするので、

守秘義務以前の問題として、

両親や精神科医や地域の支援の人的資源と連携しつつ、
生きる方向での支援を模索できなかったのか……。

中途障害を負った患者に対するGPの対応や支援の姿勢の問題として、
考えるべきことが、この事件にはあるのではないか、と思う。


【追記】
このエントリーをアップした際にYahooブログが勝手に拾ってきた
人さまのブログ・エントリの中に、英国在住でカウンセリングを受け始めた方のお話があり、
クライアントに自殺しそうな行為が見られた場合、カウンセラーは守秘義務を破ってでも
「異例の処置」をとりGPに連絡する、との説明を受けられたそうです ↓



【27日追記】
この問題で続報ありました ↓