「寒い家」対策はエネルギー節減、温暖化改善、健康格差も改善……BMJに報告された調査

月刊「介護保険情報」誌3月号の連載で
ヘルシー・ホームズ事業:英国リヴァプール」を書いた。

英国では「燃料貧困」「燃料プア」が社会問題化していて、
特に労働者が多いリヴァプール市がNHSトラストと手を組んで
健康で温かい住宅の実現を通じて健康格差解消を目指すプログラムを実施している。

まさに「福祉と医療の連携」にはこういう形もあるのか……と目からウロコの話を、
これは自前で見つけたのではなく、編集の方から教えていただいて調べてみたもの。

この問題に関する調査が最近あったようで、
その結果を受けてBMJに論説が出ていた。



調査は Friends of the Earthというチャリティによるもの。
5月12日に “The health impacts of cold homes and fuel poverty”として報告された。

「調査から分かったのは誰だって知っていて知らないフリをしてきたことばかりで
寒い家はエネルギーを無駄に使い、住民の健康を害する、ということ」。

英国の家を熱効率の良い温かいものにすれば
二酸化炭素の排出量も減るし、健康への影響も減って健康格差が緩和される。

そのために報告書が提言しているのは3つで、

① 住宅のエネルギー効率を上げて、「温かい家」はバカ高いという事態をなくすことで
家計も楽になり健康度が上がる。

② 家が寒いために燃料貧困から健康格差が起きている状況は正すべきである。

③ 家の熱効率が良くなれば使用燃料が少なくなり
二酸化炭素の排出量が減って長期的には地球温暖化の緩和に役立つ。

ちょっと意外なのは、南半球のオーストラリアにも同じ問題がある、と。


病気予防といえば、やれ、この薬やサプリでこの病気が予防できるとか、
遺伝子検査を受けて病気になる前から健康な臓器をとっちゃえとか、
個体に対して操作を及ぼすことばかり煽る人が多いけれど、
(まぁ、それはお金を生んで誰かを儲けさせるからね)

人は環境から影響を受け、環境に影響を及ぼしながら
「社会」の中で「暮らし」ているんだよねって、
この事業のことを調べていたら、つくづく思ったんだった……。

それを、また思い出した。

このヘルシー・ホームズ事業、
いま流行りの「アウトリーチ」をもう一つ拡大し柔軟にして
さらに、リーチの先にいる人たちのためになるものにするヒントが
隠れているような気がするんだけど。

とはいえ、
英国の連立政権は社会福祉予算の大幅カットを自治体に厳命しているので
リヴァプールの事業もどうなるか心配。