子ども病院成長抑制WGメンバーの正体

6日のエントリーで指摘したように、
シアトルこども病院成長抑制ワーキング・グループからは、WPASの弁護士Carlson氏が抜けているので、
その他メンバーは19人ということになります。

この19人の内訳を、以前からずっと取りまとめておきたいと思いつつ果たせていなかったので
ここできちんと書いておきたいと思います。

まず、19人のうち10人は、シアトルこども病院またはワシントン大学の職員です。
(Jane Bogleは論文ではシアトルの人だとしか書いてありませんが、
08年1月の病院サイトの情報によると、子ども病院の元職員)

その他のうち、一人がお馴染み、Wisconsin大学の Norman Fostで、

もう一人、去年の成長抑制論文の主著者だったAllen医師
Fostと同じくWisconsin大学でFostと同じくホルモン療法の専門家。
つまり、どう考えてもFostの子分。

また06年に小児科学会誌にGunther&Diekema論文が掲載された折に、
批判的な論説を書いた編集委員のBrosco医師が入っていますが、
彼は07年の成長抑制シンポで基調講演に招かれて(この時すでに妙に中立的だった)以来、
シアトルこども病院のセミナーやその他イベントの講師に何度も招かれて
いつのまにやら、すっかり同病院のオトモダチ。
権力者が反対者を懐柔する典型的な手段に
すっかりやられてしまった人という風情があります。

(もっともA事件前に両者の関係がどうだったのかは知らないので、
この点はあくまでも私の推測の域は出ません)

次にParensは、
Hastings Centerの上級研究者ということになっているから
いかにも中立の立場の人のように見えますが、なに、彼は
09年1-2月号のHastings Center Reportで
Ashley療法を擁護する論文を書いています。
WGに招かれたのが、この論文を投稿する前なのか後なのかは知りませんが、
いずれ無関係のはずもないでしょう。つまり最初から賛成の立場。

そして、重症児の親2人の内の1人は
当然のこととして賛成の立場のWalkerさん。

ここまでカウントすると、既に19人の内の15人は
身内か、あらかじめ身内側に取り込まれた人物、それから
最初から賛同スタンスの人だったことになります。

残りは4人ですが、
そのうちの一人、哲学者のHilde Lindermanは
もともと、育てる負担を背負う母親に障害児中絶の決定権があると主張している
親の決定権論者なので、

そうなると実質的には、最初から16対3。

論文が言う「グループのほとんどが“妥協”に合意した」は
議論をするまでもなく成り立ってしまうメンバーが
あらかじめセットアップされたWGだったわけです。

結局、
障害当事者で障害学の学者Ash, 重症児の親で哲学者のKittay, 
Walkerさんの相方として重症児の親のSwensonさんの3人と、
ついでに身内の側から障害当事者のMiller(10月に死去)も含めて、
「障害当事者や家族など、反対の立場の声にも十分に耳を傾けたのだ」という
アリバイ作りのために利用されたのではないでしょうか。

もっとも、Adrienne AshはAJOBのDiekema&Fost論文に
コメンタリーで反撃を試みているし(ついでに注で、署名したことへの言い訳も)、

Washington大学職員でありながら、そのために気を使いつつではあるけれど、
哲学者のSara GoeringもAJOBのコメンタリーで
社会モデルに対する理解が足りないと、やんわり牽制してもいますが。

しかし、このように中立性などカケラもないWGが
11月30日以降、あちこちのメディアの記事で
さも中立な専門家が議論した場であるかのように書かれ、
ワケのわからない「妥協点」なるものの内容が
あたかも中立な専門家が出した「決定」や「ガイドライン」であるかのように
喧伝されて行きつつあるのです。

やっぱりメディアを動員できる権力を持っている人たちには誰も勝てない――?


【追記】
このメンバーの中で、特に気になる人物として
WA大学の法学と医療倫理学の教授 Rebecca Dresserがいます。

彼女は以下のエントリーで紹介した論文で何度も引用・言及されていますが、


重症障害児は我々とは別の世界に住んでいるのだとして、
重症障害児には通常の最善の利益の考え方とは別の
「改定最善の利益」基準を設けるべきだと主張している人物です。