「腎臓がほしければ、他人にあげられる腎臓と物々交換で」時代が始まろうとしている?

最初は、Jennifer Whitfordさん(24)だった。
5月24日に事故で帰らぬ人となり、母親が臓器提供を決めた。

腎臓移植希望者の中から完全にマッチするレシピエントがみつかった。Brenda Wolfeさん(44)。

死後2日目にWhitfordさんの片方の腎臓は
Wolfeさんに成功裏に移植された。

そこでBrenda Wolfeさんの夫のRalphさん(48)は考えた。
以前、自分が妻に腎臓を片方提供しようとした時にはマッチしなくて果たせなかったが
見知らぬ人が妻に腎臓をくれるのならば、自分だって見知らぬ誰かにあげよう、と。

「大切な娘さんですよ、大切な娘さんが亡くなって、妻に命をくれたんです。
そこで私が『万が一ということもあるから私の腎臓はこのまま持っておきます』というのは
あまりにも自分勝手というものでしょう」

そこでRalphさんは
Georgetown、Washington Hospital Center, Children’s National Medical Center,
そして Inova Fairfax Hospitalが組織している腎臓ペア交換登録に参加。

Ralphさんの片方の腎臓は
63歳のタクシー運転手 Gary Johnsonさんに移植された。

Johnsonさんの61歳の妻、Jeannetteさんは片方の腎臓を、アーリントンの男性に、

その男性の姉(妹?)がテンプル・ヒルの女性に……と
順々にレシピエントの家族が、どこかの誰かのドナーとなることが繰り返されて、

5月26日から6月12日の間に次々に14件の腎移植が行われた。

ドナーのうちの2人は、
特に身内にもらったからというわけではない(non-directed)一般のドナーだった。

6月15日に、この14件の関係者らが病院で一堂に会したのだとか。

その場で、病院の移植サービスのディレクターは
単一の市内で行われた臓器の交換数としては最大ではないか、と語り、

移植コーディネーターは
「これがスタートです。この町でできるのだから、
更にエリアを広げ続けていくことは常に可能です」

腎臓移植は出血と感染リスクが伴う大きな手術となるが
ほとんどのドナーは2日で回復し、ノーマルな活動的な生活を送る、と
記事は書いている。

(たしか「私の中のあなた」の中に、激しい運動はしてはいけないとか
生活に制約がいろいろ出てくるという話があったし、
以前、パキスタンの腎臓バザールのことを調べた時には、
生活のために腎臓を売って、それが健康状態の悪化を招き、
仕事を失って更に貧窮する話がごろごろしていたのですが?)

現在、米国で腎臓移植を待っている人は85000人で、
その61%がアフリカ系、ヒスパニック系、アジア系アメリカ人

これらマイノリティには、なかなか適合するドナーが出てこないため、
今回のワシントンでの14件の交換移植でも半数以上がマイノリティだった。

(マイノリティにドナー登録する人が少ないのは、例えばタスキギ人体実験など
これまでの歴史の中でマイノリティは医療によって酷い人権侵害を受けてきており、
医療に対する信頼度が非常に低いためだと言われています。
また、配分にも人種差別が指摘されています。
私が読んだのはBlack Markets他。)

今回の移植関係者は、
「伝統的なやり方では移植してあげられない患者さんたちがいるんです。
我々はこうした交換を通して、常にマイノリティの患者さんへの移植を可能にしてきました」
「(ペア同士の交換なら)提供したいのにマッチしないということはありませんからね」

こうした成功例を受け、今年2月にはUNOS(米国臓器配分ネットワーク)が
ペア交換の登録データベースを試験的に立ち上げている。
この秋にも、マッチングを開始する予定。



UNOSがペア交換の登録とマッチングを試験的に始めるということは、
制度化されるということですね。

制度化されるということは、それが当たり前となっていくということだろうし、

親の愛や夫婦の愛などの”家族愛”を盾に取った
提供の暗黙の強要が制度化される……ということでは?

なにしろ現在でも、
親が、特に母親が、子どもに臓器提供することは”義務”とみなされつつあるようだし、
(詳細は文末にリンク)

臓器目的でデザイナーベビーを作る”救済者兄弟”という”制度”によって
生まれてくる前の子どもにも強要されているのだけど……?

なお、この記事の最初のセンテンスは
「始まりは悲劇だった。しかし終わってみたら、
14人もの人に、かけがえのない贈り物が贈られたのだった」