障害者の権利に対する医療と倫理委の無理解を考えるカンファレンス:Maryland大法学部

4月28日にMaryland大学法学部で
障害者に関する医療と倫理を巡って非常に興味深いカンファレンスが開催されるようです。

主催は The Maryland Health Care Ethics Committee Network と
The Law & Health Care Program (L&HCP)

タイトルは
Disability, Health Care & Ethics – What Really Matters
「障害、医療と倫理 - 本当に大切なこと」

カンファの情報ページはこちら

趣旨説明を以下に。(後半の日本語訳は逐語訳ではなく、概要です)

Persons with cognitive and physical disabilities comprise a growing sector of our society. Yet, health care providers and ethics committee members may lack knowledge, skills, and insight related to disability rights and its impact on health care delivery and ethical decision-making. This conference is targeted to individuals who wish to broaden their understanding of the concerns and rights of people with disabilities in the context of health care encounters. Attendees will learn about the history of discrimination against people with disabilities and the rise of the "social model" of disability, current biases among some health care providers that disadvantage persons with disabilities, and knowledge, strategies, and resources health care professionals and ethics committee members should have or be able to access to appropriately respect disability rights at their institutions and in health care encounters.

医療職も倫理委員会のメンバーも、
障害者の権利と、医療や倫理を巡る意思決定におけるその権利の意味について
知識もスキルも洞察も足りない――。

カンファレンスでは、
障害者に対する差別の歴史と「社会モデル」の登場を振り返りつつ、
現在の医療職の偏見がいかに障害者への不当な扱いにつながっているかを考え、

障害者の権利をきちんと尊重するために医療職と倫理委のメンバーは
どのような知識、戦略、リソースを持つべきか、を考える。


午前のプログラムには、障害当事者3人のパネルが予定されており、
そのうちの1人は、当初から一貫してAshley事件を批判していて
当ブログでも何度も言及しているBad CrippleことWilliam Peace氏。

午後の分科会の1つは 
Lessons from the Ashley X Caseと題してAshley事件を取り上げています。
登壇はWilliam Peace氏と、やはり当初から批判を続けている重症児の母親で
当ブログでもお馴染みのClair Roy さんの2人。

Clairさんは事情でビデオでの参加となったようですが、
そのビデオ発表に向け、ご自身のブログ
「もしあなたが倫理委のメンバーだったら、Ashleyの両親と担当医に何と言いますか」と
意見を募集しています。

それから、分科会でもう1つ、目をひかれるのは
見事な批判論文でDiekema医師を明らかに窮地に追い詰めた法学者Dr. Alicia Quiletteの講演。

Disability & Health Care Resource Allocation
「障害と医療資源の分配」

            ―――――

なぜ、医療は障害者について、こんなにも無知なのか――。
そして、なぜ、そのことに、こんなにも無自覚なのか――。

これこそ、まさに私自身が重症児の親として
もう20年以上も抱え込んできた大きな疑問であり、

また、フリーライターとして覗き見たリハ医療の世界や、
最近では介護保険関係の諸々で見聞きする中でも、
時に非常に強く感じてきた疑問であり、

そして、もちろんAshley事件を追いかける過程でも
歯噛みするような思いで何度も繰り返してきた問いでもあります。

またAshley事件は、
科学とテクノが内包する能力至上の価値観と功利主義による障害者切り捨てへの
世の中の急速な傾斜を、そのトバ口で象徴的に予言するかのように起きた事件だと
私は捉えています。

Ashley事件を小さな窓にして
この3年間に知ることになった諸々から当ブログの問題意識がたどりついたのも、
まさにDr. Ouellette の講演タイトルの「障害と医療資源の分配」という問題。

今年の初めに3周年の記念エントリーで触れた
Ashley事件を批判してきた人たちの点が、
今こういう形で線に繋がり、より大きな問題を提起するための
面を形作り始めているのだとしたら、それは本当に嬉しいことです。


ちなみに、Diekema医師のAshley講演は4月22日。
重症児への栄養と水分停止についての講演も。