「私たちの自殺に愛する人が手を貸してくれるのは許されるべき?」と問いを立てる英国メディア

Should our loved ones be able to help us end our lives?
私たちの自殺に愛する人が手を貸してくれるのは許されるべきでしょうか。

――こんな、あきれるほど不注意で大雑把な問いを立てているのはGuardian。

Guardian Daily: Assisted suicide and the law
The Guardian, January 29, 2010


Guardianがここで「我々の専門家パネル」と呼んでいるのは
最初の部分だけ聞いてみたところでは(イギリス英語は聞いても全然分からないので)
どうも、これまでの映像資料から音声を抜いて集めただけで、
実際にこの人たちを集めて議論させたものではないようなのですが、

そのポドキャストのページのサブタイトルにあげられた「専門家パネル」のテーマが、
上記の、改めて考えると実に恐ろしい問いなのです。

「手を貸す」って……最初にDebby Purdyさんが言い始めた時は
まだしも「付き添ってDignitasへ連れて行ってくれる」ことを意味していたはずなのですが、
今では「致死量のモルヒネやヘロインで殺す」ことと、みんなガッサリと一まとめ。

(31日追記:実際に討論が行われていました。詳細はこちらに)

この問いに象徴される、ある重大な事実を、
今の英国で冷静に分かっている人が少なくないことを私は心から祈りたいのですが、

英国で現在進行している「自殺幇助合法化」議論は
これまで、まだどこの国も合法化していない種類の「自殺幇助」です。

今の段階でオランダ、ベルギー、ルクセンブルク
米国のオレゴン、ワシントン、モンタナの3州で合法化されているのは
一定の要件を満たした人が所定の手続きを経た場合の、医師による自殺幇助です。

ここのところの英国での、かまびすしい議論では、
医師の自殺幇助は、むしろ単なる手段の提供に過ぎず、その中心はむしろ、
この問いに象徴されているように「愛する人」つまり近親者による自殺幇助

私は去年9月のDPPのガイドライン暫定案が出た時から
その飛躍の重大性があまり言われないことがずっと気になっているのですが、
(自殺幇助の”方法”についても、たいそう無頓着なガイドラインだったし)

このまま英国が、
私にはまるで集団ヒステリーとしか思えないような今の“世論”に流されて
(個人的にはGilderdale事件の陪審員はこの空気に流されたんじゃないかと……)
近親者の自殺幇助をなし崩しに事実上合法化してしまうとしたら、

世界で初めて、近親者による「合法的自殺幇助」へと
道が開かれることを意味するんじゃないかと思うのだけど……。


ちなみに、この「専門家パネル」に発言を引っ張ってこられているのは
Debby Purdy, Baroness Finlay, Evan Harris MP, Baroness Warnock の4人。

Evan Harris という議員さんはFinley議員と同じく反対派らしいのですが
当ブログは把握していません。

残り3人について、それぞれの関連エントリーを以下に。

Debby Purdy (夫の付き添いでDignitasに行って自殺したいMS患者)


Baroness Finlay (Baroness は女性議員の称号と思われます)
(良い死に方に関する超党派の議員グループの会長)


Baroness Warnock(議員であり、著名な哲学者でも)