シアトル子ども病院の来年の生命倫理カンファは周産期の「無益な治療」がテーマ

シアトル子ども病院のサイトに
来年7月の第6回生命倫理カンファの予告が出されています。

テーマは
Tiny Babies, Large Questions:Ethical Issues in Prenatal and Neonatal Care
小さなベイビー、大きな問題:周産期ケアの倫理問題



当ブログがAshley事件のマスターマインド(筋書きを書いている人)と考える人物で、
これまでは第3者を装って隠れていたくせに今年に入って俄かに表舞台に出てきては
Diekema医師と一緒に論文を2本も書いている  Norman Fost医師は、

このシアトル子ども病院の生命倫理カンファでは
Ashley事件の前から定番スピーカーの1人なのですが、
来年も、もちろん登場。

彼のプレゼンのテーマは

Whatever Happened to Baby Doe? The Transformation from Under-treatment to Over-treatment
ベイビー・ドゥはいったいどうなった? 不十分な治療から過剰な治療への移行


Baby Doe事件というのは、
米国の生命倫理関連事件の中でも大きなものの1つで、
日本語ではあまりいい説明がないのですが、立岩先生のところのサイトがこちら

英語のWikipediaこちら

私もあちこちで読んでいて、ファイルのどこかに資料があるはずなのですが、
ちょっと探してみただけでは、すぐには見つかりませんでした。

細部に間違っている部分があるかもしれませんが、ざっと私の頭にある理解では、

1984年に生まれたダウン症の男の子で、
出生時、消化器系に手術で十分に治療可能な異常があった。

しかし、ダウン症であることを理由に両親が手術を拒否して、男児は死亡。

この事件が大きく報道されて論争となったことから
世論の圧力を受ける形で当時のレーガン大統領が児童虐待法を改正。

現在“Baby Doeルール”と呼ばれる一連の法律を作り、
子どもが不可逆的な昏睡か、救命が明らかに不可能な場合のほかは
治療を停止してはならないと定めた。

同時にそのための予算を連邦政府から地方に下ろすことを定める一方で、
この法律に違反する治療停止事例を通報させるホットラインまで作ったものだから
医療現場から激しい反発を受けた。

ホットラインはその後、停止。

親の希望もQOLも問わない、としたことが現在に至るまで論争になっている。

ちなみに、2005年に米国小児科学会誌上でBaby Doeルールを巡る論争があり、
Ashley事件に登場して不可解なほどオドオドしつつ擁護したJoel Frader医師が
その中で「最善の利益」はポルノと同じで使う人の意向次第でどうにでもなる概念だと批判しています。

この論争関連の論文は、Pediatrics誌のサイトで無料で読めます。
Frader医師の論文はこちら

なお、米国小児科学会倫理委員会は今年7月に
小児に対する栄養と水分の供給停止のガイドラインを作っていますが、
委員長が、あのDiekema医師とあって、相当に怪しげな作文となっています。
詳細は以下のエントリーに。