「老い」は自己責任で予防すべき「病気」であり「異常」であるらしい

ちょっと前に、骨減少症というのは単に歳をとったら骨が減少するという自然現象なのに、
それが骨減少症という名前をつけられて“病気”に仕立て上げられることの怪について
以下のエントリーを書いた。


それで、余計に違和感が強かったのかもしれないのだけれど、
昨日だったか今日だったか、朝のNHKの番組で
サルコペニアがどんなに恐ろしい病気であるか、
それを予防するためにはどうしたらいいかという話題が出ていて、
うわぁ、骨減少症と全く同じだ……と思ったら、心底、げんなりした。

サルコペニア、日本語では、加齢性筋肉減少症という。

つまり、「歳をとると筋肉が少なくなりますよ」という
昔から言われてきた当たり前の自然現象に、
なんだかギクッとさせられる名前が付いただけ。

それにしても、響きの悪い“病名”ですこと。
ものすごくタチの悪い細菌の感染症でも連想しそうだ。

以下に、検索で出てきたサルコペニアを説明したサイトを2つ。
上が萬有製薬のページで、こちらは骨減少症と一緒に説明されている。
下が味の素のページで、サルコペニアの予防にはアミノ酸がいいですよ、という話。
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec05/ch058/ch058g.html
http://www.ajinomoto.co.jp/kfb/amino/aminosan/himitu/1_print.html


確かに、「もう歳だから」と諦めて何もしなければ
筋肉だって骨だって少なくなる一方だと言われれば、
そりゃ、体操したり食べ物に気をつけて予防するに越したことはないでしょう。

だから、予防のための啓発なんて必要ないと言うつもりはないです。

でも、予防の意識を持てと啓発したいからといって、
どうして歳を取れば誰にでも起こる自然現象に
ややこしげな名前をあえてつけて“病気”に、つまり“異常な状態”に
仕立て上げなければならないのだろう。

だって、昔から、ずっと
「歳をとったら筋肉が衰えてきますよ、気をつけましょうね」という話はあった。
それで、どうしていけないのか。

それに、
“病気”つまり“起こってはならない異常な状態”に仕立てあげて、予防、予防とおめかれると、

こっちとしては、まるで
努力さえすれば自己責任で完全に防げるかのように思わせられてしまうのだけど、

それは本当のところ、いったい、どうなのか?

加齢による自然現象であれば、
いくら努力して予防に努めたって限界というものがあるはずでは?

この辺りが、私には医療費節減のヒーロー予防医学のマヤカシのように思えて、
なんとなく眉にツバ塗りたくりたくなってしまう。

加齢によって誰にでも起こり、努力しても実は防ぎきれない自然現象を
“病気”に仕立てて予防の必要をおめきたてることによって
「老い」は自己責任で予防すべき「病的な異常」にされつつあるのではないのか。

このエントリーを書くための検索で、実はもっとすごい“病気”が出てきました。


歳をとるにつれて男性の性欲が衰えるのも、いまや“病気”なんだと。
じゃぁ、さ、「健康な高齢者」って、どんな人間像だというのよ、いったい?

ちなみに、このLOH症候群の報告書の出所は、株式会社マーケティングセンター。

だから、ね、
テレビでサルコペニアがどうのこうのと垂れられる講釈を聞いて、
「わ、こわい、歳をとったら大変な病気になるんだ……」と不安に陥れられるよりも、

なんで萬有製薬とか味の素とかが熱心に“サルコペニア”を論じるのか
なんで株式会社マーケッティングセンターが加齢による性欲低下を病気に仕立てるのか、
よ~く考えてみたほうがいいんじゃないのかなぁ。

世界経済でグローバリズムネオリベラリゼーションが起こしたことを
いま科学とテクノロジーネオリベが後追いしているのだと私は
このブログをやりながら、ほとんど確信してしまったのだけど。