「なぜ大国アメリカで?」と医師が憤る無保険者の実態

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無料の移動医療を受けるため、
Los Angels郊外のInglewoodに殺到する無保険人々のレポート記事がNY Timesに。
(写真はこちらの記事から)


お盆休みとて、詳細に読んでまとめる余裕がないので、
お茶を濁す方便ということにはなりますが、

ほぼ同じ実態を報告していると思われる去年の記事を以下に再掲。


「なぜ大国アメリカで?」と医師が憤る無保険者の実態(2008/11/11)

Virginia州Wise郡のカウンティ・フェア用地に年に1度、
800人以上の医療ボランティアが終結し、
テントとトレーラーで、まるで野戦病院のような無料診療所を
3日間だけ開設。

早朝から集まった無保険者は2500人以上。
歯の治療が必要な人から脳腫瘍や癌の患者まで
その多くは、この時しか医療を受けることが出来ない人たち。
そして、決して失業者ではなく、
「ちゃんと仕事をして生きてきたのに、食べるのにも不自由していて
とても医療費まで手が回らないよ」という人たち。

彼らは本当は3日間もこんなところに来ていられる身分じゃないと言いながら
診てもらえる順番を待って3日間、車の中で寝泊りする。

それでも限られた資源と時間の中で
集まった人全員の診察はかなわず、

記事にあるビデオには
3日間待った挙句に「この辺りの人は診てあげられないことになるだろう」と
告げられる患者たちの姿があります。
それを告げなければならない関係者も辛そうです。

ボランティアの医師の1人は
「1本の歯を抜いてもらうだけのために車で3日間も寝なければならないなんて
そんな現実は医学部のテキストのどこにも書いてないですよ。
こんなに繁栄している米国で
すぐそばにこんな目に合っている人たちがいるというのに
なぜ、その対策がとれないのか」と。

Hidden Hurt
Desperate for medical care, the uninsured flock by the hundreds to a remote corner of Virginia for the chance to see a doctor
The WP, November 9, 2008


私が仕事の関係でネットで英語ニュースを毎日チェックするようになったのは
2年半ほど前のことなのですが、
それまで何も知らなかったものだから
当初は世界のあちこちの医療・福祉関連ニュースに
いちいち「ウソだろ~」と目を剥きながら
どこか対岸の火事的に面白がっていました。

「面白がってなんかいられない」と姿勢を正してくれたのがAshley事件との出会いで、
それが、このブログを始めるきっかけにもなったのですが、

その頃を境に同じような「ウソだろ~」ニュースが
日本でも次々に耳に入るようになりました。

病院が患者を「捨てに行く」事件もあったし、産科・ERの崩壊のニュース、
そして、ついに無保険者の増加も――。

(ERの待合室でのた打ち回っていたのに放置されて患者が死亡……とか
 看護師不足で食事介助の必要な高齢入院患者が栄養失調……とか
 どうせ障害者だと治療せず臓器摘出を優先……とか
 どうせ重度障害は治らないから治療は無益だと餓死させる……とかは
 日本ではまだでしたっけ?)

けれど、無保険者がこのまま増え続けたとしても、
日本には何日もボランティアで無料診療所に協力できるほど
余裕のある働き方をしている医師などいないんでは……?

あ、富裕層相手に自由診療でがっぽり儲けているお医者さんなら余裕もあるのかもしれない。
でも、きっと、そういう人はボランティアなんて興味ないだろうし……。


その一方で、今日の英米の新聞が軒並みトップニュースで取り上げているのは、
医療制度改革めぐり、オバマ政権が批判に晒され、最大の危機に瀕している、というニュース。

例えば、こちらのTimesの記事など。

私もオバマ大統領の医療改革が功利主義の切捨てに向かう可能性がある点は気になっていますが、

ここのところの報道では「英国のような配給医療になる」というデマゴーグ
事実の検証を置き去りにどんどん勢いを得ていく感じがして、

社会的弱者に基本的な医療を届けることよりも、
一部の富裕層が好きなように先進医療や強化医療を受けられる自由を優先させたい人たちが
配給医療への不安を過度に煽っているんじゃないか、というような……。