被災地に”救助”ではなく“臓器狩り”に人が駆けつける“腎臓バザール”パキスタン

「介護保険情報」誌(社会保険研究所)に書かせてもらっている
「世界の介護と医療の情報を読む」という連載から
葬儀屋がホールの裏で遺体から組織を摘出してバイオ企業に流していた米国の事件を
昨日のエントリーで紹介しましたが、

ついでに、2007年1月号で臓器売買について書いた部分を。

パキスタン

地震後に瓦礫の山で
臓器泥棒

近年、世界中で大きな災害が相次いでいる。一昨年10月にパキスタンで6万人近い死者を出した大地震もまだ記憶に新しいところだが、実はこの時、冷蔵ボックスを手に瓦礫の山をうろついていた4人の男が逮捕されたことはあまり知られていない。冷蔵ボックスの中には人間の臓器が15個。いずれも瓦礫に埋もれた遺体から盗ったものだった。

しかし、臓器を求めて被災地に群がったのは4人だけではなかった。被災者の中にも生活の困窮から腎臓や目まで売ろうとする人がいて、避難民の間でもブローカーが暗躍したのだそうだ(Times, 05年10月30日)。

昨年秋に四国で臓器売買が問題になった際、渦中の医師は記者会見で「売買に関与したことはない。どうしてもという人には外国に行くよう勧めてきた」と力説した。それが妙に生々しく聞こえたので検索してみたら、いきなり出くわしたのがこの話だった。

災害現場に人が“救出に”ではなく“臓器狩りに”急行するパキスタン。去年11月12日のAP伝によると、自国のメディアにまで“腎臓バザール”とあだ名されている。同記事では本人ばかりか兄弟姉妹7人に義妹5人、甥2人もが腎臓を売ったという女性の話が紹介されている。腎臓を売るという行為が、それほど当たり前なのだ。パキスタンでは売買禁止措置が取られていないため、慢性的な債務に苦しむ農民が腎臓を売る。そしてレシピエントが支払う金額のほんの一部を手にした後、彼らの多くは体調を崩し、さらなる貧困に追い込まれていく……。

★中国ほか

臓器売買は公然の秘密
オークションにまで

お隣の中国には、死刑囚から腎臓を採っているという噂が以前からあった。無責任なデマとして、それを頑強に否定し続けてきた中国政府だが、去年11月ついに死刑囚からの臓器摘出と、その多くが外国人に売られ移植されたことを公式に認めた(LA Times, 06年11月19日)。それに先立つ7月には臓器売買を禁止。移植できる医師や病院も指定すると発表した。その後も臓器提供ネットワークの構築やし刑事犯への監督強化に言及するなど、やっと合法的な臓器提供システム作りに動き始めたようだ。

それもそうだろう。臓器移植ツーリズムで世界中から人が訪れる中国で、移植が必要な自国民1500万人のうち受けられるのは年間1万人程度。金持ち外国人がリストの順番を飛ばす上に、ドナーカード制度がなく脳死を認めない中国では臓器獲得の手段が乏しい。7月までは病院の廊下に売買広告がひしめいていたそうだ(China Daily 06年7月1日など)

イギリスでも02年に臓器売買でインド生まれの医師が有罪になり(Reuters 8月30日)、03年には大西洋を股にかけた臓器売買で、南アフリカとブラジルで14人も逮捕(NY Times, 12月8日)。また、2000年には米オークションサイトdBayに「十全に機能している人間の腎臓」が出品されたことがある。eBay側がそのオークションを削除した時に入札額は25万ドルだった。ネットに“臓器が買える国”として名前が上がっているのは他にもフィリピン、インド、ベルギー、キューバなど。臓器売買は、いまや公然の秘密のようである。

介護保険情報」2007年1月号 
「世界の介護と医療の情報を読む」(P.88-89)
児玉真美


ここには書けなかったけど、
パキスタンのニュースを読んだ時に、頭をよぎったのは、

もしも、まだ生きていて、すぐに病院に運んだら助かる状態だったとしても、
瓦礫の中から掘り出してくれたのが救助隊ではなく
クーラー・ボックスを持った臓器狩りの一味だったら、
その人は殺されたのでは……?