認知症の介護心中までが自殺幇助合法化を求める声に繋がっていく

Oregon州でALSの妻を射殺して自殺幇助を主張した夫に
殺人罪が下されたことを前のエントリーで書いたばかりですが、

認知症の妻を殺して自分も自殺した夫のニュースでも
夫妻の娘さんから死の自己決定権を求める声が飛び出しています。

           ―――――

AtlantaのEdward Travis氏は先週の水曜日、
ベッドで寝ている認知症の妻(85)を銃で殺害し、
その後、人に邪魔されないように屋根裏部屋に隠れたうえで、自分も銃で自殺。
そばには、見つけた人に宛てて、蘇生しないよう頼む手紙があった、とのこと。

別の場所には遺書や医療についての代理人の手続き書類、投資記録などがまとめてあった。

2人は60年連れ添った夫婦。
妻のAnne Travisさんは半年前にアルツハイマー病の診断を受けており、
話のつじつまが合わなくなって、一日中眠っていたが
妻も夫も家でこれまでどおり暮らすことを望んでいた。

特に先月は3回も通院があって、たいへんだった、
父は妻がこの先どうなるか、自分がどうなるか恐れたのではないか、と
2人の遺体を発見した娘のMarry Travisさんの話。

……と、ここまでは、これまでの介護殺人や介護心中と同じなのだけど、
ここから、微妙に、これまでにはなかったはずの話が登場してくる。

記事によると、
遺族はAnne Travisさんが死にたがっていたのだと考えている、というのです。

そして、娘のMarryさんが
「自分の終末期の決断は一人ひとりができるようにするべきです。
社会がもっと生きなければならないと考えるからというだけで
なぜ2人がこの先も生きることを強要されなければならないんですか」

ただ彼女は、父親の方は特に死にたかったわけではなく、
ただ介護のプレッシャーに追い詰められたのだろうと考えている。

「何が起きて、死のうと考えたのか分かりませんが
たった一人でそういうことを考えていたと思うと、胸が張り裂けそうです」

Avondale Estates man carefully prepared before killing ill wife, self
The Atlanta Journal-Constitution, July, 17, 2009


そういう介護者の苦しみに、
これまでは「支援を」と多くの人が声を上げてきたのだけれど、

「そういう人には死の自己決定権を」と
これからは多くの人が声を上げていくのでしょうか。

両親をこういう形で亡くして混乱している人が
こんなふうに、いとも簡単に死の自己決定権を口にする。

その後で彼女が父親について言っていることを考えると、
自分が「死にたければ、誰だって死なせてあげればいい」、「社会規範よりも個人の自己選択が優先」と
主張しているのだという自覚があるのかどうかすら怪しいのに。



【8月10日追記】
その後、パーキンソン病の妻とダウン症の孫を射殺した87歳の男性が
自分も拳銃自殺するという事件が起こって、以下に、
こうした介護心中を慈悲殺として云々することへの批判記事が出ています。

Wesley Smithがコメントしていて、
特にTravis事件で娘さんがしきりに父親の行為を擁護することについて、
愛する人の行為をその人が亡くなっているだけに悪く言いたくない気持ちは分かるが、
殺人をおもいやりだとするメッセージはよくない」。