Obama大統領、在宅生活支援でスタンスを微調整?

現在、米国の障害者向け公的保健制度メディケイドでは
基本的には在宅ケアが認められず、
重度の人はナーシングホーム入所しか選択肢がない。

そこで記事冒頭に紹介されているMSの女性のように
19年間会計士として働きながらアパート暮らしをしてきたような人でも
2年前に失業して収入が途絶え、メディケイドに頼ることになると
いきなりナーシングホームで暮らす以外に道がなくなる。

こういう状況については10年前に最高裁
差別であり、米国障害者法に違反するとの判断を示しており、
メディケイドで介護を受けながら地域で暮らすことも選択できるように
障害当事者らは何年も前から the Community Choice Act の実現を訴えている。

州ごとに何らかの努力は行われているようで
48000人が施設入所しているミズーリ州では
メディケアの介護費用の45%を地域サービスに回しており、
(しかし、在宅サービスの待機リストは4000人)

入所者97000人のイリノイ州ではメディケアの介護費用の30%が地域サービスに。

アリゾナでは64%が回されているが
なんとテネシー州では2007年に地域サービスに回った予算は1%のみ。

Obama大統領は上院議員時代にはこの法案提出のスポンサーの一人に名を連ねたが、
(大統領選の時には「実現に向けて努力する」みたいなことを言っていたような……)

ホワイトハウスのサイトの表現が最近になって
当初の「大統領はCCAを支持する」というものから
「各州がサービスを施設から地域にシフトするよう促進する現在の努力を続ける」に変更された。



こういう米国の在宅介護支援の不足のニュースを読んで、うっかり、
あ、なんだ、アメリカもひどいんだな、日本と違わないじゃん……と
考えるかもしれない人のために、

こちらに1例として、
24時間介護を必要とする脊髄性筋萎縮症の11歳の女の子のケースを紹介したエントリーを。


父親は連邦政府の官僚で、一家が暮らしているのはWashington DC。
連邦政府が職員にかけてくれる医療保険と娘さんに支給されるメディケイドで
これだけの在宅ケアが実現している。

ただ、折からの不況で、このたび
毎日朝7時から夜7時まで12時間の訪問看護医療保険からはずされることになった。

母親は記事の中で
「じゃぁ、私に毎日24時間、休日なしで娘のケアをしろということなんですか。
そんなこと無理です。そんなことができる人なんて、どこにもいませんよ」と腹を立てている。

もちろん中央官僚の家庭だから恵まれているのも事実だろうけれど、
この家には、他に2人の女の子がいて、その2人はなんと養子。

24時間介護の必要な障害のある子どもがいて、
それでもなお2人も養子を育てられる家庭が、日本のどこにあるだろう?

「私に24時間、子どもの介護をしろというんですか?
 そんなことができる人なんか、どこにもいませんよ」と
堂々と言い放てる日本の障害児の母親が、どこにいるだろう?

きっとベースラインそのものが全然違うところにある──。

在宅介護サービスが「ひどい」「足りない」という声を聞くからといって、
日本と同じだと思い込んではいけないんだろうな……という気がする。