WA尊厳死法 第1例は障害のある失業者

第1例目の自殺者が障害のために働けなくなった人だったというのは
前のエントリーを書いた時に初めて出てきた情報だったので
情報源とされる22日のNY Times の記事を読んでみた。

裁判書類と弁護人よると、Linda Flemmingさんは離婚しており、
5900ドルの負債を抱えて2007年に破産申請している。

Flemmingさんは元ソーシャルワーカー
破産申請時、障害があるために働くことができず、
月額643ドルの障害者手当てを受給して助成付き住宅で暮らしていた。

また友人によると、がん告知を受ける数日前に
1982年製のOldsmobileステーションワゴンを買ったばかりだった。

C&Cのトップ Robb Miller氏は
Flemmingさんと話した際に彼女の破産については知らなかったが
彼女の状況にC&Cとして支援を懸念する材料は見当たらなかったし、
2人の子どもと元夫も本人から相談を受け決断を支持していた、と。



このNY Timesの記事の書き方やトーンを
23日のエントリーで取り上げた SP-i の記事の書き方やトーンと比べると、
とても興味深いものがあります。

23日のエントリーでも指摘しましたが、
S-Piが C&C について
終末期のより良いケアと選択のアドボケイト」と説明している一方、

NY Timesは
尊厳死法の成立に向け運動したアドボカシー・グループ」と、ずばり。

また、NYT は Flemmingさんが元ソーシャルワーカーだとはっきり書き、
障害のために働けなくて手当と住宅助成に頼っていたことも書いていますが、

S-Piは「ホームレスや精神障害者の支援を行ってきた」という曖昧な書き方で
ソーシャルワーカーだった事実を書いていません。

私も最初にこの箇所を読んだ時には
「? ボランティアだったの? じゃぁ、生活費は?」と疑問に思いましたが、

S-Piの記事が全体に C&C 寄りの立場で書かれていることを考えると、
これは、もしかしたらそれが職業だったことを明確に書いてしまうと、
失業していたことまで書かなければならなくなるため
曖昧な書き方をしたのではないでしょうか。

つまりC&Cは
Flemmingさんの破産については知らなかったかもしれないが
失業して障害者手当てで暮らしていたことは知っていた。
そして、そのことはリリースで隠したのです。

これは、考えてみれば、とてもコワイことです。

NY Timesの記事ではWA州保健局から
「個々のケースの詳細はプライバシーに関わるので明らかにできない」との見解が示されています。

今後、第2例、第3例と続いていった時に、
それが障害のある人であったり、貧しいために医療・療養費に事欠く人であったりしても
そうした事情は表に出てこないことになります。

しかも、第1例目の報道を読む限り、
希望者にはC&Cが最初からぴたりと寄り添って、
幇助自殺を遂げるまで濃厚な“支援”を行うのであろうことも予想されます。


第1例目の事実関係を以下にまとめておきます。

Linda Flemming さん。66歳の女性。

ソーシャルワーカー
障害があるため働けず、障害者手当てを受給し助成住宅で暮らしていた。

一ヶ月前にステージ4のすい臓ガンとの診断を受ける。

その直後に第1回目の口頭での自殺幇助希望。
最終的な書面での希望を行ったのは5月15日。
21日に自宅で家族とペットの犬、医師立会いの下、自分で薬を飲んで自殺。

C&Cがプレスリリースにより報告。
22日にメディアが報じた段階でWA州保健局は未確認。
(医師の報告義務には30日の猶予があるためと思われる)