非侵襲出生前診断テストの倫理問題をJAMAの論文が指摘

いつもお世話になっている Patricia Bauerさんのブログ記事から。

米国医師会ジャーナルJAMAに掲載の論文(Peter A. Benn & Audrey R Chapman)が
一年以内には商業利用がスタートすると思われる非侵襲出生前診断テストについて
重大な倫理問題を懸念。

まず現在の不十分な医療制度を変革する必要がある、と。

指摘されている問題点として

・ 現在の胎児ダウン症候群のスクリーニングにおいても、妊婦はそれがことによってはさらに侵襲度の高いテストに繋がったり、中絶にすら結びつく可能性があることなど知らされていない。

・ 非侵襲テストは営利研究機関や保険会社、政府の保健機関など、このようなテストによって経済的な利益を得る機関によって“奨励されかねない”。その結果、患者個人の選択が担保されない可能性がある。

・ テストで検知可能な遺伝的障害のある人の人口が減っていけば、テストで障害が分かってなお妊娠を継続することに対する社会的な許容度に微妙な影響が生じる可能性がある。そのような周囲の姿勢の変化によって障害のある人々や家族に対する理解と支援が得られにくくなり、遺伝的な障害に対するスティグマが強化される。


結論としては、

出生前診断の安全性と精度を向上させる点を評価し、広く使用されることを奨励しつつ、
遺伝カウンセリング、それら一連のテスト使用に関する再評価、監督の強化を求める内容。

FDAに規制を求めると同時に、
実施規定や患者と医療職双方への教育、最低限のスタンダードを作る専門家機関の設置を提言。



購読していないとフル・テキストは読めないようですが、
この記事を読むだけでは

安全性と精度の向上を評価して広く実施しようという点と、
倫理問題がいろいろ懸念されるという点の、
いずれに重きを置いた論調になっているのか、よく分かりません。

それにしても1年以内に商業利用開始……。

なんにしても、倫理問題が指摘され、批判されつつも、
現実には、そんなの知らぬ存ぜぬ勢いで、あっという間に既成事実化されていく。