米国で障害児教育中心に教師による虐待が問題に

米国の学校、特に障害児教育での教師の体罰・虐待が問題になっているようです。
Patricia Bauerさんのブログなどから以下に。

GAO report details school abuse of students with disabilities
PatricaEBauer NEWS & COMMENTRY ON DISABILITY ISSUES, May 20, 2009

米国政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)からの報告書。
障害児を中心に、学校での抑制・監禁などの虐待が起こっている。
死亡例がこれまでに少なくとも20件。

報告書で指摘されている主な点として

・ 緊急事態の回避策として行われたものではない。
・ 教師に十分な知識がなく研修が不足している。
・ 抑制と隔離(監禁)を報告させているのはCAとTA州のみ。その2つの州だけで今年度中に3万件が報告されている。
・ 椅子に縛り付ける、ガムテープで猿轡。長時間の監禁で首を吊った13歳も。
・ GAOの調査対象となった教師の半数はいまなお教育者として雇われている。
・ 教師の言うことを聞かないという程度のことで行われている。


②[http://www.patriciaebauer.com/2009/05/20/info-restraint-hearing/ Additional information from restraint hearing]
PatricaEBauer NEWS & COMMENTRY ON DISABILITY ISSUES , May 20, 2009

19日に米国下院の教育・労働委員会で行われた
学校での抑制と隔離などの虐待に関するヒアリングの詳細。


Georgia special ed teacher, aide charged with child cruelty
PatricaEBauer NEWS & COMMENTRY ON DISABILITY ISSUES, May 21, 2009

自閉症男児をガムテープで椅子に縛りつけたり、
目の見えない女児を「おしゃべりするから」と机の下に閉じ込めたりした
Atlanta のWoodstock 高校Special educationの教師と助手を
児童虐待の容疑で逮捕。

警察ではこうした行為が複数回あったようだ、と。


④こちらは AP の記事で
Report: Discipline by teachers can turn deadly
AP, May 19, 2009

2002年のTexas州での死亡事例。

Cedric Napleonくん。14歳。体重129ポンド(60キロ弱)
教室で騒いでいたところを、教師に床に倒されて、上にのしかかられた。
教師は体重230ポンド(約100キロ)。

息ができないと訴えているのに教師は相手にせず、
体を離した時には死んでいた。

Cedric君の養母は議会のヒアリングで
「こういうことが先生の仕事だというんのなら、教育制度そのものが大いにおかしい」と

他の記事では
「同じことを私が家でやったら、私は逮捕されますよ」とも。

議会でのヒアリングには、
7歳のアスペルガーの子が興奮した際に、
教師が子どもの腕を背中に捻じ曲げて、抱え挙げ、頭から地面に落としたという
ちょっと信じがたいような証言も。

この一家はschool district (日本の教育委員会に当たる)を訴えて
26万ドルの賠償を認められた、とのこと。

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確かに、かなり、すさまじい内容で、
記事を読んでいると、まるで米国の障害児教育には
オニみたいな悪徳教師ばっかりかと思えてくる。

でも、まさか、そんなはずもないだろう……と思えば、

感情的に教師たたきに走っても何の解決にもならないのだから、
冷静に現場の問題点を洗い出して整理してもらいたいな、と思う。

理念先行でインクルージョンを急ぐことの弊害が起きてはいないのか。

発達障害のある子どもの急増が言われる一方で、
教育現場での手当てが間に合っていないのではないか。

障害児教育の予算をカットしておいて
問題の責任だけを現場に押し付けるようなことが起きてはいないのか。

ここでもまた、教師に「研修」を受けさせて
教師を「指導・教育」して十分な知識と技能を身につけさせれば
どんな障害像の子どもを何人担当させても
虐待まがいの行動なしに授業ができるはず……なんてことはありえなくて、

現場への現実的、具体的で有効な支援
つまるところは予算、人手がもっと必要……という話ではないのか。

ただ、こうして大きな問題になって
メディアが騒いで、まずはヒステリックな教師たたきが起こったら、
次には、その揺り戻しが必ずあるし、

そこへゼニの話が出てくれば、
「だから障害児には社会的コストがかかる」というスティグマ
また強化されることに繋がるのかなぁ……。

イヤな話だなぁ……。