TX州、親の虐待で瀕死の乳児に「無益な治療」論適用か?

Texas州は
患者にとって無益と判断した治療を拒否する権利を病院に認める「無益な治療」法がある
米国のいくつかの州のひとつ。

そのTexas州 Dallas で
両親から凄まじい虐待を受け続けた結果
重症の脳損傷、数十箇所の骨折、無数の傷を負った
生後6ヶ月のDavid Coronado Jr.君。

(指には人が噛み付いた歯型がつき、その傷が骨まで達していたり、
爪がはがされていたなど、残虐極まりない虐待です)

両親は去年12月に逮捕されましたが
医師によるとDavid君は「わずかな身動きはあるが神経的なもの。
神経がズタズタに損傷され、命が助かったとしても重症で永続的な障害を負うだろう」

12日にDavidの法定後見人が
Dallasの青少年裁判所にDavidの生命維持装置の取り外しを申請。

両親は取り外しに同意していないが
取り外しが「本人の最善の利益」というのが申請の理由。

結果は来週とのこと。



どういうリーズニングで「本人の最善の利益」とされているのか
それが気になる。


           ―――――――

……と書いたところで、既に続報が出ていることに気がついた。

Attorney withdraws motion to take Dallas baby off life support
The Dallas Morning News, January 22, 2009

こちらの続報記事によると、
法定後見人は翌日火曜日に申請を取り下げた、とのこと。

理由はDavidの容態に変化が見られたため。

具体的にどのような変化なのかは不明。
また病院側のこの問題への姿勢についても不明。

こちらの記事によると、
2004年に類似の事件があったようですが、
Amber Rose Pachecoちゃんが両親に虐待されて
脳の活動がまったく見られないほどの状態に陥った事件では
生命維持装置が取り外された後に両親が殺人罪で起訴されたとのこと。

いくらなんでも、まさか、この事件でも
生命維持装置を外すことによって子どもを死なせ、
それによって親を殺人容疑で起訴したい……というのが
実は「子どもの最善の利益」のリーズニングだった……なんてことが……?

それにしても、

急増・過激化する親による児童虐待──。
小児科医療における親の決定権──。
「無益な治療」論の台頭──。
医療に急速に広がる「コスト効率」という評価基準──。
定義が不明確なまま便利なアリバイとして使われる「最善の利益」論──。
尊厳死議論における「助かってもどうせ重症障害」=「終末期」との捉え方の広がり──。

現在の医療倫理・生命倫理の問題に関っているあれやこれやが
複雑に絡み合っていると見えるこの事件。

今後が気になります。