スイスの“自殺ツーリズム”批判

10日に英国TVがスイスDignitasクリニックでの米国人の自殺場面を放送したことを受けて、
スイス国内の医学雑誌 the Revue Medical Suisse の編集長Dr. KieferがDignitasを批判。

Dignitasの繁盛でスイスは“自殺ツーリズム”の中心になっている。
その活動は医療倫理と世論のぎりぎりの線を越えている。
耐えがたい苦痛から逃れたい人だけでなく、
家族や社会の負担を解消するために死にたいという人の自殺幇助までやっている、と。

また、金銭的にも不透明である、とも。

それに対してDignitasは
自己決定権を最重要としており、
自殺幇助の唯一の基準は
死に至る病気または受け入れがたい障害で苦しんでいて
自発的に人生と苦しみを終わらせたいと望んでいる」ことだ、と。

料金は法律的な事務手続きや致死薬を処方する医師とのカウンセリングを含め8300ドル。

もっと安く請け負いますという組織が他にもあり、
経済的なインセンティブからこうした組織が自殺を勧めることだって
ないとはいえないのでは、とDr. Kieferは懸念。

Dignitasのあるチューリッヒ自治体は“自殺ツーリズム”に歯止めをかけようと
医師によるカウンセリング回数条件を増やしたり、
使用されているペント・バルビツールの供給量を制限したりしているが
Dignitasの方でもバルビツールからヘリウムに方法を変更しつつある。

実際、Dignitasを訪れる外国人は増加の一途で
会員数は過去10年間で6000人以上に膨れ上がった。
現在、平均して週に2人が外国からDignitasに死ぬためにやってくる。

スイス人の自殺のみを幇助するグループExitは
「ドイツ、英国、フランス、イタリアの問題まで
スイスが全部解決してあげるわけには行かないのだから」
他の国も法律を変えるべきだ、と。

Swiss rethink assisted suicide for foreigners
AP (The San Francisco Chronicle), December 14, 2008


死に至る病気または受け入れがたい障害で苦しんでいる」人とは、
また、なんとも漠然とした条件。

では、例えば、事故で指を1本失ったピアニストが
「もうピアノが弾けない。この障害は受け入れがたい。いっそ死にたい」と言ったら──?

アルツハイマーと診断されたばかりの人が
「どうせ死に至る病気だし、自分がだんだん自分でなくなっていくなんて耐え難い。
 判断力のある今のうちに死んでしまいたい」と言ったら──?

うつ病の人は──?