抗ウツ剤巡る研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2

17日のエントリー
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)
紹介した報告書、実はPartⅠでした。
Part1だけでもあまりに長文で読みくたびれたので
後半は探してまでは読むまいと考えていたのですが、
19日にPartⅡがアップされたら、
なんと向こうから目に飛び込んできてしまった。
やっぱり読めということかぁ……。

前半だけでちょっと読み疲れているので前回ほどまとまめていない、ただの羅列ですが、
勝手にポイントだと思うことのみを。

原文は
Pharmaceutical Industry Hustlers - Part Ⅱ
Scoop, November 19, 2008


製薬会社の保健医療界における絶大な影響力が児童精神科の曖昧さに付け込んだことが、
医師や家族の間に、それまでの薬物によらない治療法から薬物療法への急傾斜をもたらした、と
最初に指摘した後で、以下のようなことを報告しています。

・ 38種類もの精神科薬を飲まされていた10歳の少年がニューズウイークで話題に。

2002年のSalonの記事内の証言
ADHDの治療薬を除いて、精神科薬のいずれも子どもに使われた場合の長期的安全性については、2,3ヶ月までしか調査されていない。理由は製薬会社がやりたがらないから。金がかかるし、長く効くかどうか、副作用が出るかなんて、知りたくないというのが製薬会社のホンネ。今のところ、そういう研究はこの国では弁護士の仕事になっている。副作用が論文で報告されて確かめられてから、やっと実質的なモニタリングが始まるというのが業界の実態。

2005年の議会証言
もう10年も前からFDAも製薬会社も副作用で自殺企図が起こることを知っていた。うつ病の子どもに認可されているのはProzacだけで、それ以外は効果が確認されていない。それでも、ただ内気だとか登校拒否だとかADHDだとの理由で100万人の子どもたちが抗ウツ剤を飲まされている。子を死に追いやると知っていながら、どうしてこんな事態を招いたのか。

・ 2006年の論文
2003年以前に子どもを対象に認可されたSSRIはないにもかかわらず、90年代初頭には6歳の子どもにも当たり前のように処方されるようになっていた。FDAが認可するよりもはるか前から児童精神科医が使用を認めていたからだ。実際、子どもでの大きな研究が発表される前から、彼らは子どもに使うことを勧めていて、まるで研究そのものが既に行われている処方のやり方を正当化する目的でやられているようにすら見えた。「みんながやっているから」というふうに90年代後半の児童精神科の風潮が作られたとしたら、論理も科学もない、ただの流行だった。

SSRIが子どもにも安全で有効だとする大きな研究が出始めたのは90年代後半で、論文にはいつも同じ人の名前が並んでいた。特に人間どころか動物実験すらなかった2~4種類のカクテル処方を流行させたのはDr. Biedermanら。子どもに双極性障害を診断しては2歳児にまで4種類を同時に処方していた。これほど子どもに双極性障害が増えたのは米国のみ。しかし、あまりにも高名な人物なので、講演でBiederman医師が名前を出しただけで1年もたたないうちにその薬の処方がわっと増えていたし、臨床試験の裏づけなどないまま口コミで広がっていった。Grassley議員の調査で暴かれたスキャンダルの本当の重要性と怖さはこういうことだ。

双極性障害のスキームが定着するまでは、子どもの病的なウツ(?manic-depression)は誰も聞いたことがなかったし、それはアメリカ以外の国では今でもそうである。しかし、今のコンピューター時代、子どもがいったん精神病だと診断されてしまえば、その記録は残って一生付きまとう。精神障害は証明もできない代わりに誤診だという証明もできないのだから。子どもは将来仕事に就くのに苦労するだろうし、保険に入ることができない可能性もある。

・ Dr.Emslieは去年3歳から6歳児向けに抗精神病薬を適用外での処方するためのガイドラインを発表した。Preschool Pshchopharmocology Working Group の仕事。しかし、6歳以下の子どもに認可されている向精神薬は1つとしてない。単剤であれカクテルであれ。しかし上記グループは、ADHD、過激な行為障害、大きな抑うつ障害、双極性障害、不安障害、PTSD強迫性障害、広汎性発達障害自閉症など)、睡眠障害の治療にアルゴリズムを作ったのである。

2006年のUPI報道
Duke大が2歳から5歳までの子ども307人を調査したところ、大人と同じ比率で抑うつ、不安その他の精神疾患の兆候が見られたと発表したが、この研究費はPfizerから。これで、これまでなら「第一反抗期」と言われて済んでいたものが精神疾患となった。

・ 一度に4,5種類の薬を飲まされている子どもは多い。何百万人という子どもたちが「脳を薬漬けにして成長している」。子どもたちは薬で自発性や自分の意思というものを抑制され、薬がないと自分の行動をコントロールできないと感じつつ成長することになる。そのため自分なりの創造的な問題解決能力や親や学校に頼ったりするコーピング能力が身につきにくい。(自尊心・自己価値観も低くなるだろうなと私個人的には思う。)

・ 「ADHD詐欺:精神科が正常な子どもを患者にする方法」という本も出ていて、著者は正常な子どもだと知りながら金儲けのために精神病にしてしまうのは犯罪ではないのか、詐欺まがいの診断で薬を飲まされて、副作用で死んだら殺人ではないのか、と。

・ 2004年に学校のテストを受けるのに緊張するという理由で12歳のときにZoloftを処方された少女は首をつって死んだ。処方に際しては親に対して、子どもは適応外だという説明もなければ、自殺に注意しろという指示もなかった。

・ Prozacの副作用による自殺者はこれまでに2万から20万の間と推測されている。