映画Tropic Thunder の知的障害者差別問題続報

11日のエントリーで紹介したハリウッド映画 ”Tropic Thunder” での
retard をはじめとする"hate speech"問題ですが、

11日月曜日、ロスでのプレミアに際して、
劇場前で障害当事者らが50人ほどが抗議行動を行っています。

Ban the movie, ban the word.
「この映画を禁止せよ。retardという言葉を禁止せよ」


Disability groups vs. ‘Tropic thunder’
USA Today, August 12, 2008


一方、障害当事者の中にもプレミアを見て
「ただの風刺に過ぎない。風刺ではいろんなものをバカにするもんさ。
この映画には特に障害者を貶める意図はない。悪意もないし、自分は別に問題を感じなかったね」
という障害当事者もいたとのこと。

とはいえ、車椅子で人工呼吸器使用だというこの人は
知的障害があるわけではないので、
その辺が、ちょっと微妙な感じ。

人工呼吸器を使っている障害者を“風刺”の対象にされた時にも、
この人は同じことを言えるかどうか……。

(USAToday の記事の方は Life 欄でもあり、
冒頭の書き出しからして「コメディ映画というのは所詮は誰かを怒らせるのが宿命」といったトーン。
こちらの重症身体障害者の言葉を引いているのも、もちろん USA Today の方。)


Special Olympics 会長の Timothy Shriverは
ボイコットや公開中止が現実になるとは思っていないが
「見ないでもらいたい。障害のある子どもたちが秋に学校が始まった時に
他の子どもたちから『オマエって、もろバカ(full retard)?』などと言われないように」

また、
「つまるところ、これを機に学んでもらいたいのです。
 問題なのは映画ではない。問題は、他者の人としての尊厳を考えようということなのです」とも。


この人が言うとおりだ。

「映画を禁止せよ。そんな言葉を禁止せよ」と示威行動に出る人が求めているのは
本当は、その言葉が要求している映画や言葉の禁止じゃない。

そんな映画や言葉に傷つく自分たちの痛みをわかって欲しいと訴えているのだと思う。

それなのに、こういう時、世の中の多くの人には「禁止せよ」という言葉と声しか届かない。
そして「なに勝手なこと言ってんだよ」と、その言葉と声は跳ね返されてしまう。

受け止めて欲しいのは声や言葉じゃない。
そう言わないでいられない経験を積み重ねてきた心の方。

その心が、なぜ届かないんだろう……と空しくなるから、
どちらの記事にもコメントが沢山寄せられているのだけれど、読まないことにした。