英国の介護者週間から介護についてあれこれ

6月と言えば英国では介護者週間(Cares Week)の季節。

14回目を迎える今年も
9日から15日までCares Week 2008が開催されています。
Carers UK, Counsel and Care, Crossroads Caring for Carers など10のチャリティが共催。

Cares Week 2008
GM YV, June 10, 2008


期間中には、
こうしたチャリティが介護者向けの企画や、介護者支援を訴えるイベントを企画するほか、
地域でグループや個人がイベントを独自に企画して参加することができます。
メディアでもこの時期には介護者支援に焦点を合わせた報道が増えます。

また、介護者週間では、毎年介護者に大規模なアンケート調査を行い、
この時期にその結果が公表されるのが恒例なのですが、
今年の調査で浮き彫りになった介護者の実態としては、

・ほとんどの介護者が介護負担のために体調を崩したり、不安を感じたり、疲れ果てたりしているのに、回答者の実に95%がその事実を常に隠している。

・自分の体調が悪いことから“常時”目を逸らせている介護者は19%。

・4人に1人の介護者が日々の介護をこなしていくことが自分には無理だと感じている。

・時々こなしていけないと感じることがある介護者は64%、ほぼ3人に2人。

・71%の介護者がこの1年間に最低1週間の“休み”も介護から解放される自由時間も持てなかったと回答。

・仕事を持って働きつつ介護を担っている人の5人に3人が、介護者役割に時間を使うだけのために年休をとった。

Cares Week に参加しているチャリティのサイトでこの調査報告のタイトルは
「病気なんかしていられない」。

こうした実態は、おそらく日本の介護者でも変わらないのではないでしょうか。

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英米の介護関連のニュースを眺めていると、いつも目を引かれるのが
介護労働が賃金換算されていること。

例えば英国では
家族や友人などによる無償介護労働は2006年には879億ポンドと換算されていて、
これは同じく2006年のNHS全体の予算820億ポンドを上回っています。
(CaresUKの以来でリーズ大学の研究チームが行った調査)

「自分たちが介護を担っていることによって
政府はこれだけのお金を節約できているのだ」というトーンで
こうした金額が引っ張り出されてくるわけです。

「介護費用が嵩んで困る」と常に言われ続け、脅され続けて
どこかで「じゃぁ、家族で頑張るしかないのか」と内向させられる日本の介護者とは
ずいぶん意識に差があるなぁ……といつも感じ入るのですが、

これだけの金額を政府に節約させてあげているのだから、
逆に介護者が心身の健康を損なって介護を担えなくなれば、
それだけ経済への打撃も大きいんだぞ、と
介護者支援の必要を訴える英国の介護者チャリティの言い分には
とても説得力がある、と思う。


ちなみに米国の介護者労働を賃金換算したものは
去年の6月23日から28日までUSA Todayが組んだ大型介護特集記事での情報によると、
06年では約3500億ドルで、こちらも、ほぼ同年のメディケア支出に相当する額。

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日本にもこういう計算はあるのかな、と思って検索してみたら、
かなり古いですが以下のような文書があって、
「極めて不十分な基礎データに基づく不完全なもの」だそうですが、
日本の家族介護の貨幣評価額は1兆6814億円で、
市場介護サービスの約6割だとのこと。
ただ、これ、介護保険ができたばかりの段階でのデータだし、
また、お上の換算だから、ちょっとタチが違って
そもそもの目的が日本国全体で介護と保育にかかった費用の合算にあるみたい。

介護・保育サテライト勘定の研究結果
経済企画庁経済研究所 平成12年6月27日


こんなのもありました。未完ですが、面白そう。