ギョーザだけじゃない中国製医薬品の汚染

日本で起きた中国製毒入りギョーザ騒動2日目の31日、
NYTimesには中国での白血病治療薬汚染の話が出ています。

国営の大規模製薬会社が作った白血病の薬が汚染されて
去年の夏に200人近い中国の癌患者らがマヒを起こしたとか。
この事件で上海警察が刑事事件として捜査を開始、
既に工場責任者2人が逮捕されるなど、
国を挙げてのスキャンダルに発展しているとのこと。

この製薬会社 Shanghai Hualianは20数カ国に薬を輸出しているというのですが、
日本は大丈夫なのでしょうか。

Tainted Drugs Tied to Maker of Abortion Pill
The NYTimes, January 31, 2008

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ところで、
去年アメリカでは中国製のオモチャの塗料とか
ペットフードの汚染が問題になっていましたが、
この汚染薬品スキャンダルは直接的にアメリカで被害が出たわけでもないのに、
何故こんな大きなニュースになっているかというと、
この会社がアメリカで使われているRU-486と呼ばれる経口中絶薬の唯一の製造元だから。

同じ会社とはいえ、問題の白血病の治療薬を作ったところとは別工場で作られているとか、
そちらの工場については上海のFDAがしっかり査察しているとか、
内容はそういったニュースなわけです。


このRU-486については
つい最近気になる記事を読んだ覚えがあったので
当たってみたら1月22日のWashington Postに
As Abortion Rate Drops, Use of RU-486 Is on Rise

プライバシー権に含まれるとして初めて女性に中絶権を認めた
Roe v. Wade 裁判から35年、
アメリカの中絶事情も様変わりして、
中絶の全体数が減っている一方で
2000年に認可された経口中絶薬RU-486の使用が急増しているというニュース。

女性には自宅で目立たずに中絶できる点が好評で
医師にとっても、
中絶を行うクリニックはどうしても目に立つけれど
経口中絶薬を処方するのは外部からは伺えないので
プロ・ライフ派の批判を浴びにくいという利点があって、
これまで中絶はしないという方針だった医師の中にも
経口中絶薬を処方する人が増えてきているとのこと。

これはつまり、誰にとっても「お手軽だから」ということですね。
リスクが全くないというわけではないのですが。

どうも英米のニュースからは、
様々な薬がとても安易に濫用されて、
それを当たり前と感じる文化が広がりつつあることが懸念されます。

6歳の子どもにエストロゲンを大量投与するなどという考えも、
こうした背景の中から出てくるものでしょうが、
インターネットでの薬の売買をちょっと覗いただけでも
薬の濫用は日本でも実は意外なほどに広がっているのでは、という気もします。

WPの記事では生殖医療の専門家団体のメディカル・ディレクターが
この薬のインパクトと将来性は大きいですよ。
 このまま中絶をごく普通のことにしてしまうでしょう。

まるで製薬会社のプロパーさん(MR?)が営業しているみたいに。


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ちょっと古い記事ですが
シアトル在住の日本人助産師さんが
RU-486を巡るアメリカの医療を解説しているサイトがありました。
リスクについても詳しく書かれています。
女性の健康 第4回:中絶ピル


RU-486に関する日本の厚労省の見解はこちら