自閉症3歳児殺害の母に有罪評決

米国イリノイ州で去年5月13日に
自閉症の3歳の娘 Katie McCarron を
ポリ袋で窒息させて殺害した母親(37)に対して
陪審員は弁護側の心神耗弱の主張を退けて
有罪の評決に至ったとのこと。

ちなみに母親の Karen は医師です。


この事件についてもメディアの報道が夥しく、
まだ、ろくに読めていないのですが、
イリノイ州の障害者の人権団体である
Coalition of Citizens with Disabilities in Illinois が
この事件についてまとめている文書Katie McCarronによると、

どうやら去年から主流メディアの報道は母親に同情的で、
自閉症があったのだから仕方がないとか
支援が不十分な中、孤立した母親が追い詰められたのだとか、
または娘の苦しい存在を終わらせてやった思いやりだといった
トーンが見られたようです。

日本でもこのところ障害のある子どもと親の心中事件が頻発していることでもあり、
ついそうした思い入れと予見で捉えてしまいそうな事件ですが、
ここでもまた細部の事実関係を読んでみると、
事情はメディアが描く図とはかなり違っているようで……。

まず、殺されたKatieは事件の直前まで母親と一緒には住んでいませんでした。
父親が見つけた療育プログラムを受けさせる関係で
Katieは父親と父方の祖父母と一緒にノース・カロライナで暮らし、
母親が娘と過ごすのは週末だけという生活が2年近く続いており、
事件のわずか10日前からイリノイ州で一家が共に暮らすようになったところだったといいます。

母親はその日、
昼寝をさせようとして眠らないKatieに困ってドライブに連れ出し、
誰もいないと知っていた実家に連れて行って
ポリ袋で窒息させて殺害。

その後、自分の家に帰った母親は親戚の前で
Katieが眠っているように装って抱いて歩いたりベッドに寝かしつけるフリをし、
しばらくたった後に息をしていないことを“発見”して見せています。

事件の前にウツ状態で抗ウツ剤を飲んでいたのは事実のようだし、
子どもの死亡が確認された後に夫に殺害を告白した際には
薬局で買った薬で自殺も図ったようですが、

警察での取調べビデオでは
「もうこれ以上娘の病気に耐えられない」とか
「こうすれば治してやれるんです、天国では完全な子どもになれます」
などの発言も。

周辺の証言からも
母親が子どもの自閉症を恥ずかしく思っていた、
といった声も出ており、
どうも、よく分からない事件です。

ざっと上記の事実関係を把握した中での印象では
いざ手元で育て始めてみると思うようにならないばかりの子どもに
どうしていいかパニックしてしまったものかという気もするし、

父親と母親の関係はどうだったのかという点も気になるし、

米国の、特に医療の世界でじわじわと広がりつつある
障害児・者への「無価値な存在」視が
何らかの形で影響しているのではないか、
などと考えたりもするのですが、

それらの点もまた、
もう少し事件の詳しい事実関係を知ったうえで
考えた方がいいのかもしれません。

それにしても、ここでもまた
メディアの報道姿勢は気になるところです。