Katieのケース 追加情報 1

いったんアップした後、TIMES紙の記事Disabled 15 year-old to lose womb(10月7日)を教えてもらったので、加筆訂正しました。

7日のIndependent Television Newsの記事他によると、Katie Thorpeの子宮摘出術を行う可能性があるのはEssex、ChelmsfordのSt. John’s 病院。担当医はPhil Robarts。同病院の consultant gynaecologistというのですが、ただの婦人科医とどう違うのか……? Robarts医師はKatieの母親のいうことを支持しており、他の医師らも賛同。本人に同意能力がないため、現在は手術実施に向けNHSの弁護士らの同意をとりつけようとしているところ。

【注】担当医の名前は記事によってスペリングがRobertsとなっているものもありますが、病院サイトで確認したところ、e ではなく a 、Robartsでした。またclinical decrctor となっているので、consultant gynaecologistは、婦人科長ということかとも思うのですが、確信はありません。ご存知の方、ご教示ください。

Robarts医師は「確かに過激ですが、母親はこういうことをやりたいというだけの説得力ある議論をしていると思います」。

(しかし、アシュリーの前例がなければ、Katieの母親が言っていることだけで「説得力がある議論だ」とは誰も思わなかったでしょう。つまり、彼女の説得力はアシュリーの親が展開した議論の上に立って初めて成り立っているものです。ところが当ロブログで指摘しているように、そのアシュリーのケース自体が、実は表に出ているのとは全く違う話だったのだとしたら……?) 

母親が求めているのは子宮と盲腸の摘出。子宮についてはアシュリー事件以前にも考えていたようですが、盲腸の摘出はアシュリーの親のブログがヒントになって考えたことのようです。成長抑制ももっと早くに知っていればやりたかったけれど、既に15歳となれば今更どうにもできないので残念そうです。

地元のニュースサイトICEssexの記事には、母親のちょっと気になる発言が。

Katieには痛みという概念が理解できません。出血が何処から来るのか分かりません。だから生理を体験するのは彼女のためによくないのです。

もしも分かったとしても、自分の知らない人に生理用品を換えてもらうのは尊厳がありません

Katieが発達を続けることにメリットはありません。大人に成長することはないし、子どもを生むわけでもないですから。

この記事で彼女は自分の立場をアシュリーの親と引き比べているのですが、確かに上記の発言は、アシュリーの親が主張したことの非常に大雑把な焼き直しに過ぎません。その大雑把で乱暴な論理展開には、ずうっとやりたかった母親がアシュリー事件でこれ幸いと勢いづいてしまっただけ、という図を想像してしまうのですが、それにしても気になるのは太字にした部分。

もし(生理のメカニズムについてKatieが)分かったとしても……?

一応、事実に反する仮想として提示されてはいますが、どの記事にもKatieの障害は「脳性まひ」とされているのみで、知的障害については触れられていないのです。「脳性まひ」は身体障害です。もちろん知的障害があるからやってもいいという論理は成り立ちませんが、Katieの脳性まひだけを根拠に「この子には分からないから」というのは筋が通りません。その上で「もし分かったとしても」という母親の発言を考えると、どうもこの人の言うことには、アシュリーの親が展開した理屈に重ねるための、都合のいい飛躍があるのではないかと疑わしい気がします。

さらに「生理が理解できるとしても、よく知らない人に生理用品を交換してもらうのは尊厳がない」という理屈が通るならば、他人にオムツを替えてもらう障害者、高齢者はみんな尊厳がない事態に直面しているのであり、それを避けるために彼らの体に手を加えても許されることになるのでは?



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ついでに英国の脳性まひ者の人権擁護チャリティScopeについて追加情報を。


Scopeは、母親が望んでいるKatie Thorpeの子宮摘出について、10月8日付でホームページに反対声明を出しています。(前のエントリーで紹介したガーディアン紙は、この声明文を引用したもののようです。)

また、Scopeは“アシュリー療法”論争を受けて、障害児の人権擁護のためのキャンペーンThe Ashley X Campaignも行っています。

なお、“アシュリー療法”論争の際のScopeの批判はBBCの記事Ashley – the disability perspective (1月5日)に。

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Scopeの他に、Katie のケースに「受け入れがたい」、「優生思想以外のなにものでもない」と批判の声を上げている障害者団体として、the UK Disabled People's Council