英国の保護裁判所、ダウン症の女性の強制不妊手術を認めず

ダウン症の大学生、Kさん(21)について
両親から出されていた強制不妊手術の要望を
ロンドンの保護裁判所は却下。

Kさんには現在のところ恋人はおらず、
特に交際相手を望んでいるわけではないが、

Kさんを愛情深く献身的にケアし支えてきた両親は
娘が成長するにつれて異性を意識するようになり、
時に人に対して過剰に親密にふるまうことがあることから、
今後、親から独立していくことを思うと、
障害のある弱みにつけ込まれることもあるだろうと案じての要望。

両親が相談した最初の医師は両親の強い要望に、同意したが、
「弱者である成人に対する特別な責任のある立場の女性」が知るところとなり、
セカンド・オピニオンが求められることになった。

2人目の医師は手術には同意せず、
非侵襲的な避妊方法をとるべきだ、との意見だった。

その際には、両親は、手術が認められないなら
Kさんを外国に連れて行ってでも受けさせる、とまで言っていたが、
裁判の進行の中では、国外に連れていくことはしないと同意。

法廷が任命した専門医、Samuel Rowland医師は
不妊手術に「臨床上のニーズはなく」、
本人がすぐに誰かと付き合うという状況でないなら
手術は本人の最善の利益ではない、と判断。

判事は、
Kさんが地域の Community Nurse Learning Disabilityで
人と付き合う時に身を守るための支援を受けていることを考え、

不妊手術には腸や膀胱を傷つけるリスクや心理的なリスクがあることを考えて、

本人の環境に大きな変化がない限り、
将来のKの避妊手段として現時点で手術を行うのは
行き過ぎ(disproportionate)であり、
つまり制約が最小の方法というわけでない、として、

侵襲的な不妊手術よりも、
制約度の低い避妊方法によるリスク管理は可能で、
避妊の必要が生じた場合には、これらを試みるべきだ、と判断。




この判断は、Ashley事件の担当医であり生命倫理学者のDiekemaが
事件の1年前の論文で書いていた
「差し迫って必要になるまで不妊手術はやるべきではない」
との条件にも当てはまります。

(それなのに彼は何故6歳時のアシュリーの手術をあんなに熱心に正当化するのか、
事件の最大のナゾの一つでもあるわけですが)



強制不妊は日本にもあります ↓
佐々木千鶴子さんの強制不妊手術(2010/5/18)




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知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23)
(タイ、日本、ペルー、これから進められそうな途上国のことなど)