英「全国介護者戦略」モデル事業の総括報告書 リーズ大から 2

前のエントリーの続きです。)


ケアラーへの影響

DSプログラムのサービスを利用した18653人のケアラーの内
5050人(27%)からアンケートによって情報を収集した。
10年以上、週50時間以上介護している高齢女性が中心で
上記のようにマイノリティや多様な障害・病気の人のケアラーを含む。

回答者の80%はこれ以前には数時間を超えるレスパイトの経験がなかったと回答。

NHSサポート・サイトでは介護者役割へのサポートを受けたことがない人が多かった。
健康チェック・サイトでは多くのケアラーが過去半年以内に医療職の診察を受けていたが
今回新たに全人的なアプローチで介護者の心の健康が強調されたことを喜んだ。

(注 health and well-beingをここでは心身の健康と理解・仮訳しました)

休息サイトのサービスでは
「自分自身の生活」を送りやすくなり自信を持てた、
心身の健康のために行動するようになったという報告があり、
3分の1が新たな余暇活動を始めていた。

また専門職とのコミュニケーションがよくなった、
ケアラーとしてどんな支援やサービスを受けられるか、よく分かった、の声があり、

レスパイトを利用しなかったケアラーでは心の健康スコアが悪化する傾向があった。

健康チェックは支援を受けたマイノリティの多くに好影響があった。
4分の1が自分の健康に対する見方が変わり、運動量が増えた、と回答。
ほとんどの人がその他のサービスに申し込みをした。
ただし、一部の回答で、健康チェック以外のケアラー支援が
適切に行われていることがまず必要との課題も浮き彫りに。


コスト・パフォーマンス

DSプログラムの目的の一つに
最もコスト・パフォーマンスのよいサービス提供方法を探る、というものがあった。
正確な測定はできないが、研究からはプログラムで導入されたケアラー支援の多くは
医療と福祉領域でのコスト削減に繋がる可能性があるとのエビデンスが得られた。

全国評価とローカル評価から、削減が見込まれるのは

・入院、施設入所の予防
・支援によりケアラー役割の維持が可能
・心身の健康の問題を早期に発見できる
・ケアラーの心身の健康の改善
・連携・協働ができやすくなる
・GPの診療の効率化によるコスト削減(? Efficiency savings in GP practices.)
・ケアラーの再就労または離職防止
・ケアラー間でのインフォーマルな支援ネットワークの構築


政策提言

1. いずれの地域でも地方自治体、NHS組織とボランティア団体とが連携し、効果的な介護者支援を共に開発し提供する努力が必要。

2. サービスの開発には、地域の介護者支援の連携に多様なケアラーを含めることが必要。

3. 広い範囲のケアラーに支援を届け、まだサービスに繋がっていないケアラーに手を届けるためには、地域の関係者の柔軟な連携と、時にはターゲット・グループの特性に応じて臨時の体制を組むことが必要。

4. 地域レベルでの効果的なケアラー・サポートには多様なメニューが含まれ、それが個々のニーズに合わせて変更可能であること。

5. ケアラー・サポートのメニューについては、地方自治体とNHS組織とボランティア・セクターや状況に応じてその他の団体の間での合意が必要。

6. 新たな診断や退院や外来受診時など患者に介護する人が付き添うことの多い場所を中心に、病院が新たな介護者を見つけ出しサポートするメカニズムを定常的に持つこと。

7. 全てのGPに診療を通じてケアラー・サポートのキーマンとなるスタッフを決めるよう奨励すべき。そのキーマンの協力によって介護者を見つけ出し、地域の適切なサービスに繋げ、そして介護していることによってケアラー自身が病院の予約を取りにくかったり治療を受けにくくなることがないよう保証する。

8. 病院、GP診療所、地方自治体、ボランティア・セクターにおいてケアラーと接する全てのスタッフは、介護責任がケアラーの心身の健康におよぼす影響に配慮できるよう研修を積み、ケアラーが心身の健康チェックを受けられるようアドバイスできなければならない。

9. すべての関係機関がスタッフに対して定期的にケアラー支援の啓発研修を行うべきである。