親が病院に“棄てた”子ども、行き場なく (米)

精神障害のある子どもを「病院に棄てる」親がいることは
かなり前から米国では問題となっていて、

08年にNE州が法律で保護しようとしたら、
余りにも多数の親が子どもを病院に棄てていくようになったために
対象を乳児に限定する法改正を行い、その分支援策を約束する、という展開があった。



今回、WP記事が問題にしているのは
ワシントンDC周辺の病院に同様のケースが続発している、
それなのに、そういう子どもの受け皿がなく縦割り行政の責任のなすりあいで
これでは精神障害のある子どものセーフティ・ネットは機能していないじゃないか、
だから他に頼るところのない親が病院に子どもを棄てていくんだ、
これはDCに限らず、全米で起こっていることなんだぞ、
早期にカウンセリングを実施すれば違うだろ、と。

(でも、早期にカウンセリングがあるだけでは
使えるサービスがないまま「相談窓口」作らせるどこかの国の介護みたく、
あまり解決にはならないような気がするけど。)


9月15日に
メリーランド州Prince George在住の母親が
DCの子ども病院の精神科に10歳の男の子を連れて来た。

で、そのまま自分は帰ってしまい、
その後「もう面倒を見切れない。育てられない」と引き取りを拒否し続けている。

裁判書類によると、その子どもはこれまでに
ADHD躁鬱病(manic depression)、双極性障害(bipolar disorder)を診断されており、
親族の目に鉛筆を突き刺したことがあるという。
医師には人を傷つけるのが「おもしろい(funny)」と言ったとか。

子どもを棄てられた病院では困り果てて裁判所へ。

ウチは急性期の病院だから、棄てられた子どもをずっと置いておくわけにはいかない、
誰も引き取ってくれないなら、この子を救急車に乗せてPrince Georgeに運び、
福祉部の前に棄ててくるぞ、みたいなことまで言っている。

一方Prince George郡では
この子を治療できるような医療機関がないから引き取れない、という。

DCの福祉当局は
「母親がDCの住民ではないからダメ」。

仮に親子がDCの住民だったとしても、
子どもの精神障害をちゃんと見れるような機関はDCにもないのが実情。

つまるところ、
子どもの精神保健もセーフティネットも整備されていないということで、

WP記事は
「子ども達のセーフティネットはいろいろ整備されていて
ワクチンだって打ってもらえる。年に1度の往診も受けられる。
それなのにメンタル・ヘルスだけは後回しになっている。

その一方、
最近、the National Center for Children in Povertyが出した報告によると、
子ども5人に1人が精神障害を診断されており、
10人に1人には家庭や学校や地域での生活に支障をきたすほどの
メンタルヘルスの問題があるというのに」

「機能不全のお役所仕事、役に立たない施策、教育の欠落と、
なんといっても大きく不足しているのはカネ」

で、すごいのが、
この10歳の少年のケースでDCの上級裁判所が出した命令で
「誰かが子どもを引き取って、たらい回しを止めよ」と。

誰かが……って。



なんかイヤ~な予感がするのは、

日本で療養型病床の廃止方針が打ち出されて以来、
地域での受け皿なんかないまま施設や病院から追い出された高齢者はその後、
重症高齢者専用のアパートという名の貧困ビジネスの食い物にされている……。

そんなように親に棄てられた子ども達の周辺にも、
いわゆる「貧困ビジネス」の新たなマーケットが開拓されていくのでは……みたいな……。

それを想像すると、
うああああああああああああ……髪を掻きむしってしまう……。

障害のある子ども達も、親が面倒を見切れなくなって、かといって殺すこともできず、
公共サービスだって「どうにかしてあげるカネなんかないよ」ということになったら、
そういうところに押し込められていくしかないんだろうか。

高齢者と違って、子どもは、もしかしたら
誰も気づかない内に一人ずつどこかへ連れ去られていくんじゃないだろうか。

もう何年も前から英国の空港や港周辺の保護施設で
移民の子ども達が数十人単位でいつの間にか姿を消しているように……?


英国で子ども達が消えている話については、こちらに ↓
子どもたちがこんなにも不幸な時代(2008/5/30)(これの⑨)
2009年5月11日の補遺
2011年10月23日の補遺