米の科学者ら、非倫理的だと承知の上でグァテマラの性病実験を実施

6月に以下のエントリーで
米軍兵士の性病感染を懸念しペニシリンの効力を確認するために
グァテマラの孤児、精神障害者、囚人、売春婦などに
梅毒や淋病などのバクテリアを注射して感染させた1940年代の人体実験の実態が
去年10月に明らかになり、米国政府が謝罪、調査が進められていることを紹介しましたが、


オバマ大統領が命じた米国側の倫理問題調査大統領委員会の調査で
2日間の公聴会が始まった、との続報。

委員会報告によると、
少なくとも5500人の囚人、精神障害者、囚人、子どもが被験者にされ、
そのうち少なくとも1300人が梅毒、淋病、軟性下疳に感染させられた。
そのうち少なくとも83人が死亡。
ただし死因と実験との直接の因果関係は不明。

公聴会で出てきた酷いケースでは
梅毒に感染させられて、明らかにそれが原因で死に瀕している女性に対して
医師らは治療するのではなく、淋病菌を含む膿を目に入れるなどし、
その女性は半年後に亡くなった、という。

米国政府の科学者らは1943年と44年にインディアナ州でも
囚人241人を梅毒菌に晒す実験を行っているが、
その際には予め実験に関する詳細な説明を行ったうえで
自ら進んで承諾した人のみを被験者としているので、

グァテマラでは説明もせず承諾も取らずに行ったことから
実験の関係者が非倫理的な実験であることを承知の上で実行したことは明らか。

大統領委員会の委員長 でペンシルバニア大学のAmy Gutmann氏は
「これは我々の歴史の闇の一章です。
そこに日の光をあてることが大切。
被験者にされたグァテマラの人々に対しても、
我々自身のためにも、その闇の一章を解明するべきです」

グァテマラ政府も調査中。



この記事への読者からのコメントに
「1940年代から後に倫理観は変わってきているというのに
なんだって今さら、こんな記事を書く意味があるんだ?」というものがあり、
また、それに賛同する人が複数いることに、ちょっと驚く。

既に過去の話だから、
真相究明も被害者への謝罪・補償も無用だし、
事実を広く周知させる必要もない、とでも?

それに、以下にリンクしたような種々の情報は現在のものであることを考えると、
本当に医療倫理は改善されてきていると言えるのかどうか……。



障害のある人や途上国の人々や貧困層の人々を「どうせ」と見下し、
それぞれの人として尊厳や人権を尊重するのではなく、むしろ
医学の進歩のために有効利用すべき「資材」とみなそうとする目線は、

今なお、というよりも、実は今だからこそ、
医療を始め科学とテクノをマーケット創出のグラウンドと捉える
グローバル強欲ひとでなし金融(慈善)資本主義の中に
よみがえりつつある……とも言えるのでは?