「包皮切除手術でガンが見つかったからって無断でペニス切除なんて」訴訟
そして麻酔から覚めたら、ペニスそのものがなくなっていた。
医師は、術中にガンが見つかったので、
ペニスを切り取ったのは必要な措置だった、と主張。
ペニスを切り取ったのは必要な措置だった、と主張。
しかし service, love and affection の喪失に対して損害賠償を求めて
訴訟を起こしたSeaton夫妻の弁護士は
訴訟を起こしたSeaton夫妻の弁護士は
医師は2008年のプレスリリースで
「彼が癌になったことは気の毒だが、
その病状に適切かつ必要な治療を提供したことで
医師が責められるのは不当であり不合理である」。
「彼が癌になったことは気の毒だが、
その病状に適切かつ必要な治療を提供したことで
医師が責められるのは不当であり不合理である」。
面白いのは、包皮切除の手術となると、やっぱり、この人、
Diekema医師がコメントを求められたらしくて、
Diekema医師がコメントを求められたらしくて、
医師にこうした外科手術を行う権利があるかどうかは「難しい問題だ」。
「本当に命の危機が差し迫っている事態だったら、
医師は行動することができるし、また行動すべきです」
医師は行動することができるし、また行動すべきです」
しかし
「患者を起こして、状況を患者と相談する時間があるなら、
一般にはそれが望ましいですね。とくに、ガンみたいな病気が分かって
臓器や四肢の切除が必要だということになる場合には」
一般にはそれが望ましいですね。とくに、ガンみたいな病気が分かって
臓器や四肢の切除が必要だということになる場合には」
この事件、すごくいろんな問題をはらんでいて、
考えていると芋づる式にあれこれ頭がいろんな方向に飛んでいくのだけど、
考えていると芋づる式にあれこれ頭がいろんな方向に飛んでいくのだけど、
まず頭に浮かんだのは、
こういう場合に、日本だと、
患者は麻酔で眠らせたまま医師から家族に説明があって
こういう場合に、日本だと、
患者は麻酔で眠らせたまま医師から家族に説明があって
「このまま切除するのがいいと思いますが?」
「じゃぁ、お願いします。おとーさんの命には代えられません」
「じゃぁ、お願いします。おとーさんの命には代えられません」
家族は患者本人の自己決定権なんて、あまり考えずに、
むしろ患者と家族は一心同体みたいな感覚で
平気で代理決定してしまいそうな気がするんだけど、違うかな。
むしろ患者と家族は一心同体みたいな感覚で
平気で代理決定してしまいそうな気がするんだけど、違うかな。
で、目が覚めて、患者は医師ではなくて家族を責める――。
患者が意思決定能力を失っているのは麻酔による一時的な状態であり、
患者が侵襲に同意したのも包皮切除術の範囲でしかないのだから、
これは家族が代理決定できることではない、と考えるのが
たぶん理屈で言えば正しいんだろうな、と思う。
患者が侵襲に同意したのも包皮切除術の範囲でしかないのだから、
これは家族が代理決定できることではない、と考えるのが
たぶん理屈で言えば正しいんだろうな、と思う。
もちろん、差し迫って命にかかわる緊急事態とかでは
また話は別なんだろうけど。
また話は別なんだろうけど。
そういえば、この人の手術の時、奥さんは病院にいなかったんだろうか。
いたけど奥さんに代理決定権はないと思った医師が説明しなかったのか……。
いたけど奥さんに代理決定権はないと思った医師が説明しなかったのか……。
ここには、患者本人が了承していない医療的侵襲は
患者の知らないガンヘの治療だった場合にも暴行に当たるのかどうかという一般的な問いと、
患者の知らないガンヘの治療だった場合にも暴行に当たるのかどうかという一般的な問いと、
それが、たまたま別の外科手術の最中だったという状況ではどうか、という問いと、
最後の点では、
ペニスの切除というのは一般的な臓器の摘出というよりも、
むしろDiekema医師が触れている四肢の切断のほうに近いような……。
ペニスの切除というのは一般的な臓器の摘出というよりも、
むしろDiekema医師が触れている四肢の切断のほうに近いような……。
でもって、そういうことを考えていると、
「重症障害者には子宮なんか、どうせ用がないのだから」という理由で
QOL維持向上のために、または介護者の便宜のために摘出しても構わない……という論理に
いかにセンシティビティが欠けているか……ということを、また考えるし、
「重症障害者には子宮なんか、どうせ用がないのだから」という理由で
QOL維持向上のために、または介護者の便宜のために摘出しても構わない……という論理に
いかにセンシティビティが欠けているか……ということを、また考えるし、
そして、もしかしたら、この事件、どこかで
Seatonさんが思いがけない形で突然にペニスを失ったことの意味とか衝撃の大きさに対して、
「ガンになった臓器なら切除するのが当たり前」としか受け止めない外科医の
センシティビティの欠落した対応が、実は裁判にまでなった要因の1つだったのでは、とか、
Seatonさんが思いがけない形で突然にペニスを失ったことの意味とか衝撃の大きさに対して、
「ガンになった臓器なら切除するのが当たり前」としか受け止めない外科医の
センシティビティの欠落した対応が、実は裁判にまでなった要因の1つだったのでは、とか、
案外、本当の問題は結果ではなく、
その結果を巡っての対応のプロセスで「誠意のない対応、心ない言動に傷つけられた」という
論理では主張しきれない、患者の痛みや傷つきの問題だったりするんじゃないのかなぁ……とか、
その結果を巡っての対応のプロセスで「誠意のない対応、心ない言動に傷つけられた」という
論理では主張しきれない、患者の痛みや傷つきの問題だったりするんじゃないのかなぁ……とか、
いろんなことが次々に脈絡もなく頭に浮かんでくる事件。
はたして、どういう議論になっていくのか。
はたして、どういう議論になっていくのか。
裁判は月曜日から。
【2013年1月4日追記】
ケンタッキー州の上訴裁判所の陪審員は、医師はSeatonさんの同意を得ていたと解釈。原告の敗訴。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/01/phillip-seaton-loses-case-against.html
ケンタッキー州の上訴裁判所の陪審員は、医師はSeatonさんの同意を得ていたと解釈。原告の敗訴。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/01/phillip-seaton-loses-case-against.html