2011年6月17日の補遺

ここ数日のエントリーで取り上げているように、ゲイツ財団のワクチン・キャンペーンに対する批判が出ている件で、財団の御用新聞Seattle Timesの読者欄に「財団の善意を批判すべきではない」というタイトルで、「みんな、一体どうしちゃったんですか? 確かに、子どもたちみんなにワクチンを打つことなど不可能かもしれません。でも、それはそれとして、善意の行動には素直に頭を下げられないものですか?」と、シアトルの夫婦の投稿。:いや、それほど単純な話ではないと思うんっすけど? ただ、本来はGAVIの活動への批判であるはずのものを、誰もが「ゲイツ財団への批判」と疑いも抵抗もなく受け止めていること自体、GAVIが事実上ゲイツ財団の下部組織であることの証かもしれない。
http://seattletimes.nwsource.com/html/northwestvoices/2015340854_gatesfoundationgives1billionforvaccines.html

6月27日に米国でPartnering for Global Health フォーラム。オバマ政権と、バイオ製薬業界と、もちろんゲイツ財団とが一堂に会して、「グローバル・ヘルスのための新たなツール開発を促進する革新的な方法を検討する」んだそうな。「オバマ政権がイノベーションへのアプローチを改めて、グローバル・ヘルスの研究と開発にバイオテクノロジーをガンガン入れていく」ことが期待されているらしい。このフォーラムの主催は、BIO Ventures for Global Health と the Biotechnology Industry Organization. つまり、バイオ企業とゲイツ財団からObama政権へのラブコール。:これもまた「ワクチンの10年」祭りの後のマーケット作りを狙った動きのように私には見えるけど、途上国は結局、先進国のスーパーリッチたちにとって、マーケット作りのポテンシャルがいくらでも埋蔵された、マネー・ゲームのプレイ・グラウンドに過ぎないのか? それにしても、このところのゲイツ財団の動き、同時多発的で矢継ぎ早で……。なんだ、これ? いったい何が起きている?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228693.php

Lancetに、HPVワクチン接種開始後の3年間と、開始前の2年間を比較して、18歳以下の女児では子宮の異常がちょっと減った、とのオーストラリアの調査結果。他の年齢層では減少は見られず。ここで言われている「異常」というのは、たぶんこちらのサイトに書かれている「高度異形上皮」と「軽度異形上皮」のことではないかと。軽度は95%でどうってことない。高度では約20%で癌に移行しない。癌に移行する可能性はあるけど、この段階で発見・管理しておけば大事には至らない、とのこと。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960551-5/abstract?elsca1=TL-170611&elsca2=email&elsca3=segment

で、上記の論文について、Lancetの論説が「HPVワクチンの効果:グラスは半分入っていると見るか、半分カラだと見るか?」。:それほど微妙な「効果」であっても、エビデンスが急がれている……?
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960650-8/fulltext?elsca1=TL-170611&elsca2=email&elsca3=segment

未熟児は成長してからも健康度が低く、人づきあいも苦手で学校の成績も良くなくて、成人してからは心臓病のリスクが高い。:そういえば、シアトルこども病院とゲイツ財団が死産・早産撲滅キャンペーンを立ち上げた直後には、こういう研究がやたら目についた時期があった。で、その頃に未熟児を産ませず、生まれても救命しないための科学的エビデンス作りが進んでいるというエントリーを書いた。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/228730.php

英国の介護者週間で、GPに「介護者支援の役割を」と。:英国ではGPに患者が介護役割を担っているかどうかを知り、介護している人には支援情報に繋げる役割が、たしか「介護者法」で規定されていたんじゃなかったっけか? それとも「全国介護者戦略」の方だったか? 
http://news.uk.msn.com/health/articles.aspx?cp-documentid=158258516

米国カトリック司教会議で合意が成り、自殺幇助合法化に反対のスタンスを表明する声明が出された。こちらは簡単にまとめたニュース。:このところのゲイツ財団関連に振り回されて、いつもトップにもってきている自殺幇助問題が今日は最後に来てしまった。でも、これは大きなニュース。できれば読みたいけど……?
http://www.catholicculture.org/news/headlines/index.cfm?storyid=10705


ターミナルな癌の痛みに苦しんでいて、なおかつヤク中でこのままだとムショ行きだと恐れて自殺しようとしたけど失敗した56歳の友人に頼まれて、2008年11月に銃で撃って殺したRobert Goulding (53)の裁判で、Goulding側のあれは自殺幇助だったという主張を退け、Sダコタ州の最高裁は第1級殺人罪を認めた。死を直接的に引き起こす行為を明らかに本人が行っているのでなければ、自殺幇助にはならない、との理由。:英国でKay Gilderdaleを無罪放免したばかりか、称賛までした最高裁の判事に聞かせてやりたい。Kay Gilderdaleは、モルヒネの錠剤を砕いて空気と一緒に娘の点滴に入れたというのに。
http://www.therepublic.com/view/story/b783fa2dae644804a417e04ed699d480/SD--Mercy-Killing-Conviction/

BBCの自殺幇助場面放映で、なお議論百出している。これは、キリスト教関係からの批判。
http://www.churchtimes.co.uk/content.asp?id=114367

こちらは大衆紙the Sunに、BBC番組の擁護論。
http://www.churchtimes.co.uk/content.asp?id=114367