“A療法”すでに12人の男女児に実施……とAshley父のブログ

Ashleyの父親のブログに1月13日付のアップデイトが出ており、
その中で、これまでにAshley療法を我が子に行った12人の親から
報告をうけたことを明らかにしています。

広報上の懸念から公開はしていないが、
そのうちの1つのケースでは病院の倫理委員会が承認した
同療法をやってくれない病院もあるが、やってくれる病院もある、とも。

そのほかの内容としては、

・Ashleyは現在、体重 約29.5キロ、身長134センチ。

・側わん(背骨がS字状にねじれていくこと)がひどい。ホルモン療法後、側湾が進んで、08年8月の計測で56度だった。75度になったら、内臓を保護するために手術を受けなければならないが、幸い、09年10月の計測でも56度でとどまっている。成長抑制療法が側湾予防に効果があるかどうか、注目してみたい。

・“Ashley療法”とくに成長抑制については広く医療界で議論してもらっている。ある医師からは、08年5月にハワイで開かれた小児科学会の成長抑制パネルでは、内分泌医らの反応が良かったとわざわざメールで知らせてもらった。それによると、Ashley療法を我が子にやってほしいという親からアプローチを受けたことがある人に挙手してもらったところ、部屋にいた半数の医師(おもに内分泌医)が、また実際に実施した人に挙手してもらったところ、約12名が手を挙げたとのこと。

・09年のシアトルこども病院Treuman Katz センターの成長抑制シンポで、Diekema医師が報告したところでは、主要な子ども病院2つで倫理委員会が成長抑制療法を検討し、なんら倫理問題はないとの結論に達した、とのこと。

・09年6月の論文 “Growth-Attenuation Therapy: Principles for Practice” では、小児内分泌医2人と、生命倫理学者2人が、成長抑制療法を倫理的に妥当だと結論付けた。

・2010年1月の論文 “Ashley Revisited: A Response to the Critics” では、高名な生命倫理学者2人が同様に結論付けた。




父親が今回のアップデイトで
「ほら専門家からの支持がこんなに」と並べてみせている最後の3点は、相変わらず、
すべて最初から彼の息のかかった医師らが彼の走狗としてやっていることばかりですが、

非常に気になるのは、上記の3点目で、
米国小児科学会が成長抑制でパネル・ディスカッションを開いている。
FostとDiekema両医師は小児科学会の倫理委員会で発言権の大きな医師でもあり、
いずれ小児科学会の承認を取り付けようとするだろうと考えていたのですが、
08年5月の学会で、すでに成長抑制をテーマにパネルが開かれていたのですね。

倫理学や法学など、他の分野の議論がどうあろうと、
医療のことは医療の内部の議論だけで、着々と進めていくつもり?


また、他に、ちょっと気になることとして、
現在のAshleyの体重を先日のSobesy氏のグラフに加えてみると、
パーセンタイルはかなり下がっていると見えるし、
成長抑制をしなかった場合と比べて約5キロ程度の抑制効果があったと言えなくもない。

また、父親が言っている側わん症については、
身長が低いままだと側わんがひどくなることを避けられるという利益は確かにある、と私も思います。
側わんがひどくなると、内臓を圧迫したり、位置が変わってしまったりもするので、
側わんを予防することが内臓の保護につながる、という面も確かにあるでしょう。

でも、その利益をこの議論に加えることで
この人は「それなら、もっと早いうちからホルモンをもっと大量に投与して」てなことまで言い出しかねない。
ここでも、完全に重症児を医療化しようという議論にもっていかれてしまいそうです。


それにしても、ここ2年、Ashleyの写真を出してきませんね。
なぜなんだろう……?



この件についてのClairさんのブログ・エントリーを以下に。


父親のブログに寄せられたコメントの数々では
Ashleyよりもはるかに軽度の子どもたちの「ケアしにくさ」が描かれて、
Ashley療法の正当化に使われている。

それでは重症児にのみ、本人のQOLのためで、介護者の便宜のためじゃないという正当化は
やっぱりウソだったのか、と鋭く突いていますが、

この長いエントリーを読んで、ひたひたと感じるのは、
ただ、ひたすらに深い悲しみ――。