59歳がIVFで妊娠希望、医師ら年齢制限には反対(英)

Sue Tollefsenさんは59歳で
ロシアでの生殖補助医療によって2年前に女児を出産している。

今回はロンドンのクリニックでのIVFを希望。

クリニックでは
夫の同意書と、主治医の支持を表明した文書
カウンセラーとの綿密な相談と、詳細な健康チェックを条件に
受け入れを検討中。まだ結論は出ていない。

しかし、59歳のIVF希望に
かねてよりくすぶっていた年齢制限の必要議論が表面化している。

NHSでIVFが受けられるのは40歳までで、
民間のクリニックも50歳以上の女性には治療を行わないのが通例だが
これまでに少なくとも2人、58歳の女性が治療を受けている。

生殖補助医療の専門家らは

「50代女性への治療では母子双方へのリスクが増加するので
私を含めて多くの医師はやらないが、
社会はクリニックが個別に判断することだと考えている」

「ヒト受精胚機構(HFEA)や法律で何歳かで線を引き規制したところで、
どうせその規制ラインを1歳程度超えた女性が現れて
受けられないのは法的不平等だと訴えるに違いないのだし」などと言い、

ドナーの卵子を使用する限り年齢制限の必要はなく、
あくまでもケース・バイ・ケースの判断で、と年齢制限に反対。

しかし、英国医学会の医療倫理委員会会長は
やるとしたら、このクリニックは
それが子どもの最善の利益であることと親の養育能力について
HFEAに正当化してみせなければならない、と。

ちなみにTollerfsenさんの希望については
BBCのドキュメンタリー・チームが追いかけているとのこと。


まさか、スペインやインドの高齢出産記録と競りたい医師もいる……なんて……?

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専門家が科学とテクノで簡単解決文化へと誘導しておきながら
最終的なところで社会の意識や個人の自己責任に責任転嫁する論法で思い出したのと、

この59歳女性の妊娠希望ケースを
BBCのドキュメンタリー・チームが追いかけているという部分に、
BBCはもともと科学とテクノ関連のニュースが好きだしなぁ……
NHKBBCに似てきたのかなぁ……という連想も繋がったので、

昨日の「クローズアップ現代」で考えたことを、ついでに。


昨日のNHKの「クローズアップ現代」が取り上げていたのは、
脳とコンピューターのインターフェイスBMI)の可能性。

BMIで現在既にできること、将来できるようになるかもしれないことの
素晴らしい可能性を次々に描き出しておいて、
いよいよ番組の最後のところにきて専門家が言うのは

「もちろんリスクはあるので、
利益とリスクをはかりにかけて利益が上回る場合にのみ適用する」

BMIが脳を変容させるリスクもあるので、研究者も現場も一般の人も
利益とリスクとをきちんと把握・比較したうえで、利用するように」。

でもリスクについては、それ以上の説明はなかったし
番組の中でもリスクを描いた部分は、まったくゼロだった。

番組以外での情報提供で考えてみても、
BMIの利益の研究とリスクの研究でいえば、
きっと圧倒的に前者が多いはずだし、

情報提供されるのは効果と可能性という“利益”ばっかりで、
リスクに関する「ない」研究は「ない」ことそのものが見えなくなるという陥穽に
世間の大半の人ははまったままだというのに、

それでどうやって一般人が“利益とリスクを把握し比較検討”できるというんだろう……? 

利益ばかりを研究し、利益に関する情報ばかりを流して、
科学とテクノによる簡単な問題解決と簡単な欲望充足文化へと
社会を誘導し、その意識や価値観を変容させておきながら、
「でも、もちろんリスクはある。最後は自己責任ですよ」という論法はないでしょうに。

番組では、米国で売り出された、
集中すれば脳波を感じて球が浮き上がるオモチャが紹介されていて、
子どもが遊んでいるシーンがあった。

その子どもの目を見た時に、
このオモチャは危険だ……と私は直感したのだけれど、
(もちろん素人の直感なんて何の根拠にもならないのは承知だけれど)

「何かの作業に集中した時に、その集中の結果として一定の脳波が出る」ということと、
「その脳波を出すことを目的にした集中を意図的な作業とする」こととは
結果として出る脳波が表面上は同じであっても、
脳で起こっていることと、そのことの脳への作用は
全く別物のはずではないのでしょうか。

(ここの論理の倒錯は「うつ病は脳内の化学変化が原因だから薬物で治る」という
因果関係の捉え方の倒錯に、ちょっと似ているのではないでしょうか?)

もしも、最後の解説で言われた「BMIは脳を変える」というリスクが
多少でも、その違いと繋がっているとしたら、
誰かが、このオモチャの危険性を指摘するべきではないのでしょうか。

実際に被害を受ける子どもが多数出て、
誰かが因果関係を指摘する声を上げるまでは、
このオモチャも出回り続けるのかもしれないけれど、

その段階で指摘されたところで
因果関係を最終的に証明することは不可能だろうし、
証明できないものは存在しないことになるのが科学的思考というものらしいから
製造元が因果関係は証明できないと突っぱねれば、それまでになるのでは……と思うと、

イヤ~な予感がした。

生殖補助技術の安全性についても、ホルモンや遺伝子や脳についても、
まだまだ解明されていないことの方が圧倒的に多いはずなのに、
先走りの見切り発車的な“やったもん勝ち”で、いじられていく――。