2009年8月19日の補遺

これ、地味な記事だけど、昨今どんどんビッグ・ブラザー社会化している英国では、とても今日的に本質的で重要な問題を含んでいると思う。狂牛病がひそかに蔓延して、実は多くの人が知らず知らずにかかっている恐れがあるため、どれくらいの人が目立った症状がないまま感染しているかを調べる唯一の方法として、英国政府は法医学者らが解剖の際に調べてくれることを望んでいるのだけれど、解剖は死因の特定のために行うものであり、その際に研究への協力を遺族に求めることになると、本来の法医学者の立場の中立性が失われ、仕事への信頼を失う、と法医学者らは反発。その反発にエールを。でも、“科学とテクノで何でも予防、なんでも簡単解決万歳”の文化からは「法医学の中立性と信頼という利益と、狂牛病蔓延の実態が把握できないままに放置される害やリスクを検討すれば、法医学の中立性がなんぼのもんじゃい」的な反論が出てきたって、もう、たぶん驚かない。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8207034.stm


去年英国のNHSが医療過誤訴訟の賠償金として支払った総額は8億ポンド以上。産科の医療過誤訴訟が最も高額であるものの、中には将来に備えて凍結保存した癌患者の精子が解けて使い物にならなくなって、精神的なダメージを受けた、との訴訟も数件。3年前は6億ポンドだったのに、この3年間で急増。:科学とテクノの時代の変化を受けて、医療過誤訴訟の内容も、そりゃぁ、変わっていくのでしょうし、科学とテクノで医療費を削減というシナリオには、これ以外にも思いがけない盲点は結構あるんじゃないのか、という気がするのですが?
http://www.guardian.co.uk/society/2009/aug/19/nhs-legal-costs-compensation